国内

図書館の寄贈本問題 利用者が書店に行けば解決すると専門家

 2013年4月にリニューアルオープンした佐賀県の武雄市図書館。DVDレンタル大手の「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が約3億円、武雄市が約4億5000万円の計7億5000万円をかけて改装し、運営はCCCに委託す手法をとったが、さまざまな問題が噴出し騒動となっている。

 8月5日には、図書館がリニューアルする際に購入したとされる資料の一覧がネット上で出回り、“不要な書物ばかり購入している”“TSUTAYAの在庫を買い取っているのでは”などと“疑惑”の声が上がった。

 なぜ民間会社が“図書館介入”してきたのか。その理由のひとつに、図書館予算の削減という問題がある。

 実際に武雄市でも、運営費用4億5000万円のうち、3億円をCCCが、それ以外の人件費などを市が負担しているが、市負担のほうは赤字だ。そしてこれは、決して武雄市だけの問題ではない。

 ジャーナリストで『つながる図書館』(ちくま新書)著者の猪谷千香さんが指摘する。

「そもそも、税収が減っている自治体が多いですし、待機児童問題や介護といった喫緊の課題に対処するため、図書館の予算はどうしても後手になって削られがちです。また、2003年にサービスの向上や柔軟な運営を目的として、公の施設の管理に民間のノウハウを取り入れる指定管理者制度が導入されました。

 現在、指定管理者による図書館は増えていますが、経費節減目的の導入や、数年間の契約で指定管理者が切り替わる可能性があることから、雇用形態が不安定になるという問題が指摘されてきました。また、自治体直営の図書館であっても、年々、非正規雇用の職員が増加、司書の数も減っています。司書は専門性が高い仕事です。図書館は単に娯楽として読みたい本だけでなく、地域の歴史や文化を記した、郷土資料、個人や地域の課題を解決するための資料を揃えていかなければなりません。

 現在から50年、100年後まで、その地域にとって必要な本を長期スパンで考えて運営していかなければいけません。蔵書構築のための選書の知識や経験が必要です。そうした人がいなければ、図書館運営の屋台骨が骨粗しょう症のようにスカスカになってしまいます」

 コスト削減を迫られた図書館は苦境に立たされている。さらに、図書館が抱えている問題はまだある。

 挙げられるのは、「寄贈本」の問題だ。図書館の蔵書は書店から購入する以外に、寄贈によって支えられている。そのため、蔵書を増やしたり、ベストセラー本の不足解消のために、本の寄贈を広く求めている図書館は少なくない。そこには、非売本や歴史的に価値がある資料を揃える目的もある。その中で、最近増えているのは市民からの寄贈だ。「いらなくなった本を捨てるのは忍びない」、「役立ててもらえるのなら」といった善意の行為だが、これが実は図書館にとって大きな負担になることがある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン