戦後70年の今年、日本は大きな転換期に差し掛かっている。誰もが心の中にケモノを飼っているからこそ、しっかりと平和を守り続ける努力をしなければならない。
戦争は一人ひとりの人生を変えてしまうが、そもそも人生は、戦争がなくても、思うようにはいかないものだ。そのことを痛感させてくれたのは、恋愛映画の「かけがえのない人」だ。「きみに読む物語」でデビューし、泣ける恋愛小説の騎手といわれるニコラス・スパークスの原作である。この映画も、また泣かせる。
ある事件に巻き込まれ、すれ違ってしまった恋人同士。20年間、それぞれの人生を歩んできた二人が再会する。10代の燃えるような恋と、過ぎ去ってしまった日々が切ない。結果的に見れば、恋愛は成就しなかった。だからといって、その人生は虚しいとは言えない。
このところ、「何のために生きるのか」と、青臭い自問を続けていたぼくだが、この映画を見て、人生に意味や答えなんてないと思えてきた。結果はどうあれ、何かに必死になり、生きている手ごたえを感じることができれば、それで十分なのではないか。ただ必要なのは、生きる覚悟だけだ。
人生何度目かの曲がり角に立ち、これからどう生きたいのか、まだ答えは見つからない。しかし、映画館の暗闇は、そんなぼくをやさしく受け止めてくれた。もうしばらく映画館通いを続けながら、とことん悩むのも悪くないな、と思っている。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号