ライフ

鎌田實医師 人生に意味や答えはないと思うに至った映画とは

 長野県の諏訪中央病院名誉院長・鎌田實医師は映画が大好きで、高校時代は年間150本も鑑賞。シナリオを自己流に書いて、映画監督になるか、医者になるか、迷った時期もあったという。鎌田氏は「あの青春時代、映画の中に、どう生きるべきか、答えを探していたように思う」と振り返り、「あれから約50年、ぼくはまた人生に迷い、映画館通いを始めた」という。今年の夏は、「ジュラシック・ワールド」と「ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション」も見た。

 * * *
 この夏、戦争と人間を描いた映画を何本も見た。「日本のいちばん長い日」もよかった。芥川賞作家の高井有一原作の「この国の空」は、中年の男性に恋をしてしまった若い女性の目で戦争をとらえている。茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき、わたしの国は戦争に負けた」という一節が胸に迫る。この映画の中年男と関係してしまった若い女性の、戦争に負けた日の言葉がすごい。「これから私の戦争がはじまる」

 ドイツ・フランス合作映画の「ふたつの名前を持つ少年」は、実話を元に作られた。ユダヤ人の8歳の少年が、ユダヤ人の名前とポーランド人の名前を持ち、ナチス迫害を逃れて生き抜いていく。美しい風景を背景に、人間の弱さと強さが交錯する物語だ。

 サスペンス仕立てで引き込まれるのは「あの日のように抱きしめて」。ユダヤ人強制収容所から女性歌手が生還する。顔に大きな傷を負うが、形成外科で顔を作り直して、夫を捜す。やがて、彼女は、自分や自分の家族がナチスに捕まったのは、ドイツ人の夫の裏切りであることを知る。それでも夫が恋しくて、近づいていく。夫は彼女が妻と気づかないまま、妻の膨大な財産を得るために、「妻を演じてほしい」と頼む。はたして裏切りのなかに、真実の愛は見つかるのか。

 戦争というものは、人間の心をケモノにしてしまう。だが、どんなに非道な行ないをした人間も、平和な時代ならば、誠実でやさしい市民として生きることができたかもしれない。もし、戦争という時代に生まれていなかったら、もっと違う人生がありえたかもしれないと思うと、戦争の罪深さをあらためて感じる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン