お墓や仏壇の前に供える物にも作法がある。
「基本の五供といって、花、水、灯り、香、食べ物を供えます。灯りはろうそくなどを立てて明るくします。香は線香のことで、供えるお花は、菊や百合の花というイメージがありますが、必ずしもそうでなくていいので、故人の好きな花をお供えしてあげるのが供養になります。ただし、バラのようにトゲのあるもの、毒のあるものはタブーとされています」
お供えする食べ物は、果物やお菓子の他、精進料理などが基本。お彼岸の時期の食べ物で欠かせない「おはぎ」「ぼたもち」は、見た目は似ているがそれぞれに意味と違いがある。
「春のお彼岸は“ぼたもち”、 秋のお彼岸は“おはぎ”と呼び、それぞれの季節に咲く牡丹と萩の花に由来しています。ぼたもちは牡丹のように丸い形で、おはぎは萩の花に見立てて俵形でした。餡も違います。小豆を収穫したての秋には皮付きの小豆で作った粒あん、春は冬を越して硬くなった皮を取り除いたこしあんを使いました」
小豆の赤色には、災難が身に降りかからないようにするおまじないの効果があると信じられ、先祖の供養と結びついたといわれている。
これらの供え物は、お参りした後に下げて持ち帰るのが一般的なルール。置きっぱなしにしておくとカラスの被害に遭ったり、虫が湧くからといわれているが、理由はそれだけではないようだ。
「供えた物は必ずいただきましょう。墓前に限らず、神棚や仏壇にお供えすると、あちら側でお供え物を食べてくださるので、それを下げて食べることで御加護をいただきます。
お供え物に限らず、お歳暮やお中元などのいただき物を一度お供えしてから食べる家も多いと思います。おはぎもまずは仏様に召し上がっていただいて一緒に喜びを分かち合うのがしきたりです」
※女性セブン2015年10月1日号