浅野忠信との映画は『アカルイミライ』以来となる
黒沢:浅野さんも深津さんも、「この役はどういう設定なんだろう」「どういう人物なんだろうという」とは考えない。彼らは脚本を読んでまず、「この映画はどういう映画なんだろう」ということを押さえる。この映画は多分こういう映画だろう、この物語は多分こういうことを狙っている。だから優介という役はこういうポジションだろう、瑞希という役はこういうあり方でいるヒロインなんだな、と。それが、人物はどうとでも自由に動かせるものなのだろうと思います。
だからこの映画が目指しているものがどんなものかを説明すれば、自分が演じる役がどういう人物なのかわかるのだと思います。おそらくですが、このお二人くらいになると、現場で相手の出方や監督の出方を待つのでは。浅野さんであれば、深津さんが自分が思っていたのと違う芝居をしてきたら違う芝居で応える。監督からもっとこうしてくれと言われれば、そう直せばいい、というような非常にキャパシティーの広いスタンスで現場に臨まれたんだと思います。実際、演じてみたら案の定、自分の芝居がそのまま全体の中で受け入れられて撮影が進んでいったんだと思いますよ。
――黒沢監督にとって良い俳優とはどういう俳優ですか?
黒沢:二人のような俳優です(笑い)。良い俳優というのは、まさに映画の中で、物語をちゃんとわかってくれる方。その中でどういう立場かを踏まえている方が理想ですね。ぼくだって物語を完璧に理解しているわけではないので、浅野さんや深津さんによって、「なるほど、これはこういう物語なんだ」って気づかされたことは多々ありました。
――撮影現場でお二人はどんな雰囲気だったんですか?