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金田一秀穂氏 「戦争法案」は「女子会」同様気分盛り上げ言葉

 近年、嫌~な日本語がやたらと使われている。日本語学者で杏林大学外国語学部教授の金田一秀穂氏は、そのひとつとして「戦争法案」を挙げる。いったいなぜなのか。

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『論語』にこんな一節があります。ある時お弟子さんが「先生が政治をやられるとしたら何をなさいますか」と孔子に訊ねる。すると孔子は「まず名を正そう(必也正名乎)」と答えるのです。「名」は「言葉づかい」と訳しても差し支えないでしょう。政治は言葉で動くのだから、まずその使い方を厳密にしておかなければならない、と言うのですね。

 ことほど左様に言葉は大事なのですが、今の政治家にその意識はあるのでしょうか。

 例えば安保法案をめぐってしばしば使われた「国民の理解」(を得る/得られない)という言葉。総理をはじめこの言葉を使う時には必ず「理解=賛成」という願望がこめられています。「理解しているから反対するんだ」という人だっているのに、「反対するのは理解していないからだ」と言わんばかりです。

 こうなると反対意見に耳を傾けたり、法案の正否を改めて点検したりはできませんね。つまり議論を放棄しているのです。

 では反対する野党はどうかと言いますと、こちらはこちらでやっぱりお粗末。彼らは安保法案を「戦争法案」と呼び、その上で反対する。

 そう呼んだからと言って法案の中身が変わることはありません。一方で、この言いかえによって本質が歪められてしまう大事な言葉がある。「戦争」です。これは非常に重たい言葉で、そう軽々しくは使えないし、使う時は具体的な思考の立脚点として、慎重に扱わねばなりません。

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