イギリスには、職にあぶれたポーランド人が多く移った。それに対してイギリスでは「ポーランド人が来て犯罪が増えた」「移民に職を奪われている」という声があがっている。

 ドイツ・ベルリンでは、移民やその2世が生徒の80%以上を占める高校がある。彼らは教師らに暴行したり学校にギャングを連れてきて騒ぎを起こしたりしている。日本とは比較にならない“学級崩壊”状態だ。彼らはテレビのインタビューに「俺たちに未来はないんだ」「将来の仕事は強盗だろうね」などと語り、教師たちはもう耐えられないと、惨状を綴った陳情書をベルリン議会に提出した。

 各国が移民受け入れに伴う副作用に悩まされているなかで、そこに年間数十万人の難民がさらに押し寄せたらどうなるだろうか。

 まず失業率は急激に上がり、犯罪が増える。

 膨大な数の難民に、テロリストが紛れ込んでいても、まったく防ぐことができない。どこかで爆弾テロが起きて犠牲者が出たら世論は「やはり難民は受け入れるべきではない」と一転するに違いない。報復で難民が無差別に殺されたり嫌がらせされたりすれば、難民は「我々は何のために祖国から逃げてきたのか」と思うだろう。そして、憎しみが憎しみを生むことになる。

 カネもかかる。メルケルは難民支援予算として2016年に60億ユーロ(約8000億円)追加する計画を発表したが、それを負担するのはドイツ国民だ。不満は蓄積する。

「難民が受け入れられてよかった」と美談仕立ての物語ばかりを報じるメディアは、そうした将来の課題に目を向けるべきだ。そろそろメディアも甘さを捨て現実を考えるべきではないか。

※SAPIO2015年11月号

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