仕事においてメールを連絡手段ではないと考える人は少ないだろうが、かつては欠勤の連絡をメールでするなんて非常識だという風潮が強かった。出勤直後の忙しない時間に電話はかえって迷惑との考え方もあり、最近は電話よりメールを推奨する職場もあるが、LINEやFacebookのメッセンジャーなどSNSについては否定的な意見が少なくない。新入社員を迎える季節には必ず議論になり、ちゃんと連絡したのになぜ非難されるのかという声も少なくない。
社会人1年目の恵美さんは、今年はじめて風邪をひいたとき病院からLINEで会社の先輩に欠勤の連絡をした。病院では自分の携帯から電話をすることがはばかられたからだ。
「病院で電話をかけるのはできないなと思ってLINEしたんですけど、『LINEだけじゃダメ。電話入れて』と返事がきました。ふだんは仕事のやりとりも短い連絡ならLINE使っているんですけど、欠勤の連絡だけなんで電話なんですかね。公衆電話から電話しましたけど。学生のときのアルバイトでは、欠勤やシフト変更の連絡はいつもLINEでした。メールより早いし既読マークつくから便利だと思うんだけどなあ」
この認識のずれは、ふだんよく使うコミュニケーション系メディアの差異が大きく影響している。今年5月に公表された『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』(総務省)によれば、平日のSNS利用とメール利用を年代別にみると、10代、20代ではSNS利用の行為者率が50%を超えメール利用を上回っているのに対し、30代~50代ではメール利用の行為者率が50%を超えSNS利用の行為者率が大きく下回っているからだ。
いまのところ、SNS利用が日常的か否かについて、若者と30代以上とで連絡手段として大きな感覚のずれが生じているようだ。職場は様々な年代の、いろいろな背景の人が集まるところ。明文化されたルールがあるのでなければ、前述の恵美さんのように、自分で常識だと思っていたことが通用しないこともある。