このため、毛沢東主席の指示で、軍と国家科学委員会が北京で薬剤耐性マラリア予防治療全国協作会議を招集、約60の機関から多数の研究者や医師が参加。屠氏はこの研究プロジェクトのひとつのグループの責任者に任命された。
このグループがマラリアに有効な成分を発見し、薬品化に成功した。この研究成果を基礎にして、その後、各国でも優れたマラリアの特効薬が製造された。
これが評価されて、屠氏の今回の受賞につながったのだが、多数の研究者が研究に携わったものの、当時の政治的な混乱が続いていた文化大革命だったこともあって、研究過程が精査されることもなく、チームリーダーだった屠氏の研究成果となった。同じチームのメンバーはいまも、これを認めず、屠氏が孤立する原因になっているという。
また、この研究が基礎になってできた薬は年間15億ドル(約285億円)に達しているが、屠氏らには一銭も入ってこない。なぜならば、「当時は文化大革命で、当時の中国人には特許を申請するという考えはもっていなかったからだ」と屠氏は同紙に語っている。