1991年には、運輸省(現在の国土交通省)が、社会的に批判を受ける行為や外国で禁止されている行為を説明したビデオやパンフレットを作って、飛行機の中で上映したり、ガイドブックに掲載するなどした。

 マナーの悪さを海外から声高に指摘されている状況に危機感を持ち、国をあげて対応したことがうかがえる。それから30年、“日本人お断り”の洗礼を幾度も受けながら、私たち日本人は世界に通用するマナーを徐々に身につけてきた、とされている。それでも、それはたった30年前の話だ。

 近年、中国メディアでは、「中国人のマナーが悪いといわれるけど、かつての日本人だって酷かった」「日本人も数多の批判を経て、最も歓迎される観光客になった」などという記事が並んでいる。

 そして中国では、そんな日本にならうかのように、少しずつではあるがマナーを学ぼうという動きもあるようだ。2013年には、中国政府が旅行客に向けてオフィシャルマナーブックを作成している。ジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰さんはこう話す。

「『文明旅遊出行指南(礼儀正しい旅行の案内)』と題されたその本には、〈痰やガム、ごみなどをポイ捨てしない〉〈ホテルの備品を壊さない〉〈どこでも大小便をしたり、鼻くそをほじったり、歯くそをとったりしないこと〉〈日本人の家に行く時は靴を脱ぐ〉などの注意事項が並んでいます。旅行会社でツアーを申し込むとこれを渡されて、説明を受けるのです」

 思わず笑ってしまうような内容ながら、30年前の日本人の姿を思えば、大きな声で笑うことはできないのではないか。かくいう私たちも、本当に“国際的なマナー”を完璧に身につけたのだろうか。前出の商社勤務の女性が言う。

「先日、仕事でイギリスに行きましたが、コーヒーショップで列に並ばないアジア人がいた。あぁ、また中国人かな、と思っていたら日本人の若い女の子のグループでした。店員に注意されておとなしく言うことを聞いていましたが、今でも分別がついていないのか?…と少しドキッとしました」

※女性セブン2015年11月5日号

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