性機能障害で悩んでいるカップルは意外と多いという。日本人の性事情を大真面目に科学する学術団体、日本性科学会理事長の大川玲子氏(産婦人科医)が、その治療法を解説する。
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私の若い頃に「新婚インポテンツ」という言葉がありました。当時は新婚旅行に出発する夫婦を家族や友人が東京駅で花束を手渡して送り出した時代です。夫婦は旅先で初夜を迎えるのですが、男性にとってはかなりのプレッシャーになります(笑い)。
奧さんは「初日は疲れているから仕方がない」と諦めても、2日目、3日目になってもできないと焦ってきて、夫はますます勃起できなくなる。脊髄損傷や動脈硬化など身体的要因を除けば、このように勃起障害の原因は緊張や不安なんです。
そうした不安を解消する行動療法が、カップルでする感覚集中訓練です。勃起のことを考えないよう男性側に注意して、性器以外に体のどこが感じるかをお互いにタッチしながら探っていく。そうやって身体感覚に集中すると、男性はつい勃起してしまうんですよ。
女性側にセックスの不安がある場合でも、まずは女性上位(騎乗位)で挿入し、それができるようになったら正常位に移行する。
このような治療法は米国のマスターズ博士とジョンソン女史によって1970年代に確立されています。
●おおかわ・れいこ/国立病院機構千葉医療センター産婦人科非常勤医師。千葉きぼーるクリニック婦人科勤務。2006年より日本性科学会理事長を務める。
※週刊ポスト2015年11月6日号