ライフ

「カネの切れ目が孫の切れ目」 70歳男性の同窓会で全員頷く

 本誌・週刊ポスト前号で報じた「孫疲れ」特集は大反響を呼んだ。特に、編集部にかかってきた読者からの電話では、経済的な負担を訴える声が多かった。それでも孫のため、といわれると断りにくいのがシニアの辛いところだ。例えば孫と一緒の家族旅行では、「費用は祖父母が全額負担」が常識のようだ。

「年に数回、長男や長女に孫との旅行に誘われる。子供が旅行計画を立ててくれるのはいいが、ホテルを予約するのは私の役割。つまり私の名前で予約して、支払いは私ということ」

 と元公務員の男性(63歳)。だが、彼の悲劇はこれだけでは終わらない。

「毎年1回はスキー旅行にも行くが、孫たちはすぐに大きくなるから、毎年のようにスキーウエアを買い替えないといけない。孫に『じーじ、今着てるウエアがもう小さいの……』といわれると、嫌々ながらも買ってやるしかない。だけど、私が一緒にスキーに行けるのは1回だけで、子供家族はひと冬に4~5回は行っている。露骨に“買ってもらったら終わり”って感じです」(前出・元公務員)

 孫を前面に出されると、ついお金を出してしまうのが祖父母の悲しさか。

「息子や娘は『○○がピアノを始めたいっていってるの』とか『××が大きなテレビが欲しいってきかないの』と、いかにも孫がいっているような言い方でさりげなくお金を求めてくる。親が勝手にいっているとわかっていても、孫に会えなくなると困るから、ついつい『じゃあ、俺が買ってやるよ』といってしまう。自分の子供には厳しくしてきたのに、孫のことになるといいなりになってしまう自分が情けない……」(元会社役員70歳)

 孫のためのお金を「出させてあげている」といわんばかりの子供たち。その要求につい答えてしまう祖父母の葛藤は深い。

 だが、「こんなに援助してあげているのだから、自分が困った時には子供や孫が助けてくれるはず」と思うのは大間違いだと家族問題評論家の宮本まき子氏はバッサリ。

「息子・娘夫婦側は『孫育てをさせてやっている』『これは遺産の前渡し』くらいにしか思っていません。『息子・娘夫婦に支援するのは、将来体が動かなくなった時に介護をしてもらうための投資』みたいな話がありますが、お金を出したって『感謝の心』がなければ、介護なんてしませんよ」

 実際に元会社員男性(70歳)は、同窓会旅行でこんな切ない話を耳にした。

「最初はお互いの孫自慢で盛り上がっていたんですが、誰かがポツリと『カネの切れ目が孫の切れ目』と言い出して。たしかに、ウチの孫たちも以前はよく遊びに来ていたが、娘に『年金生活で余裕がなくて』とこぼしたとたん、ほとんど寄りつかなくなった。どこも似たり寄ったりなのか、『それは名言だ』と全員が頷いていた」

※週刊ポスト2015年11月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン