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東芝社員1100人が競合ソニーに転籍 本人たちに選択権なし

 7月に発覚した2248億円に上る粉飾決算疑惑で揺れる東芝社内に、さらなる激震が走った。10月28日、東芝は半導体部門の主力工場の1つである大分工場の一部をソニーに売却する方向で調整していると発表した。

 これに伴って2016年3月までに同部門の社員から約1100人をライバル企業であるソニーに転籍させる。売却額は約200億円とみられている。突然の発表に社員は驚きを隠せない。本社に勤務する50代中堅幹部がいう。

「発表の翌日、会社から社員にソニーへ売却する枠組みの説明があり、大騒ぎになった。不正会計問題で先が見えない中での発表に、社員の間で“誰が行かされるんだ”という不安が広がっています」

 今回、売却・縮小の対象になった東芝の半導体事業は、全社の売り上げの4分の1を占める主要部門だ。

 部門内でも、スマートフォンなどに使われる記憶装置「NANDフラッシュメモリ」の業績は好調だが、その稼ぎを同部門内の画像センサーなど赤字事業が食い潰す構造になっている。利益を水増しする“チャレンジ”が常態化していたため、不採算部門の改革に着手するのが遅れていたのだ。

 改革のメスが入ることになった大分工場は1970年に操業を開始し、東京ドーム8個分の広大な敷地内で約2400人の従業員が汗を流す。2001~2002年には室町正志・現社長が工場長を務めており、今回“古巣”である工場のリストラに踏み切ったのは、室町社長の「覚悟の表われ」との声もある。

 現在の予定では大分工場のスマートフォン向け画像センサー(CMOSセンサー)の生産設備がソニーに売却され、同センサーの開発担当者や関係する従業員およそ1100人がソニーの子会社に転籍するという。

 大分工場の残りの事業は子会社の岩手東芝エレクトロニクス(岩手県北上市)と統合される。2016年4月に東芝は新しい子会社を設立し、ソニーに移らない大分工場の社員のほとんどが、この新会社に移る。

 大分工場の社員たちはライバル企業の傘下に入る者と東芝グループに残る者に分けられるが、本人たちに「選択権」はないという。本社勤務の40代社員が明かす。

「大分工場にあるイメージセンサーの施設は原則としてそこで働く人員とセットでソニーに売却されます。つまり、いま働いているラインによってほぼ自動的にソニー組になるか残留組になるかが決まることになりそうです。決定に不満があれば会社を辞めるしかない」

 転籍する社員について東芝広報室はこう説明する。

「ソニーグループへの移籍については、大分工場、小向事業所(川崎市)などCMOSイメージセンサー事業に従事している従業員が対象です」

※週刊ポスト2015年11月20日号

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