たとえば受け取り時には、「ここにほつれがあります。シミがありますね」と点検して、そのシミを抜くにはどうしたらいいか、いくつかの方法を提示して、そのリスクも説明した上で、お客が納得する方法を選んでもらうなど、まるで病院で手術をするよう。
では、改訂前はどうしていたかというと、
「多くのお店ではきちんと説明していましたが、中には職人気質のかたもいて、自分の心の中で決めてしまうこともあったと思います。クリーニングの作業はお客様の目の前で行われるものではありませんから、受け取りやお渡しの時に、双方でしっかり確認することが、トラブル防止には欠かせません」(半田さん)
接客の課題は、近年の“モンスター・クレーマー”にどう対応するかということ。
「クリーニングに出したら穴が開いた。どうしてくれる、なんてまだかわいいもの。中には実際はシャツ9枚しか持ってきてないのに、『10枚!』と言って、店側がうっかり伝票を切ると『高級シャツ1枚、4万円したんだぞ。弁償しろ』とくる。店はやっていられません」と半田さん。
一世帯あたりの年間洗濯代も、ピークだった平成4年の「4割程度」だ。原因は、洋服のカジュアル化や、団塊世代が退職してスーツを着なくなったこと。ドライクリーニングの衣類を家庭で洗濯できるとうたった洗剤の普及や形状記憶ワイシャツの出現…。
「でも安い服にクリーニングは無用ではないんです。昔ながらの職人は『ユニクロの1000円の服だって、おれがドライクリーニングすれば3000円の肌触りにして返せるのに』と話しています」
最後に失敗しないクリーニング店の選び方を聞くと、「まずはワイシャツなど単価の安いものを預けて、クリーニングの仕上がりはもちろんのこと、検品や接客態度がていねいか、総合力を見てください」と半田さん。
さらに、こちらも、染みがついていたら何の染みか話す。ブランド物やビンテージなど高額な物はいくらで買ったとか、ひと言伝えた方がいい。ボタンなど代えがないものを、いったん外してから洗う場合もあるからだ。
そんなことを額に汗してお客に話す店主が、この秋から全国各地で見られそうなのだ。
(取材・文/野原広子)
※女性セブン2015年11月19日号