全身麻酔で仰向けの患者の左右の脇の下に、1センチ前後の小さな刺し傷を3、4個作る。そこから内視鏡や手術器械を入れて治療する。人工心肺で心停止する恐れもない。
この治療を受ける8割の患者が左心耳切除と、アブレーションを同時に行なう。左心耳切除だけなら、治療時間は20~30分、アブレーションを同時に行なっても、1時間ちょっとで終了する。
「ウルフ-オオツカ法が可能になったのは、内視鏡手術テクニックの進歩と、テクノロジー(手術器械)の進化のおかげです。左心耳切除は、切離と同時に、ホチキス留めのように切り口を閉鎖できる自動縫合器を使用することで、驚くほど短時間かつ安全にできます。ウルフ博士が開発した内視鏡用のアブレーション器械は、手術時間の大幅な短縮と、治療効果の向上をもたらしました」(大塚部長)
皮膚の小さな刺し傷から行なう内視鏡治療は、筋肉や骨を傷めず、美容上の利点もある。手術時間が短く、低侵襲なため高齢者でも治療可能で、入院も術後3~5日と短期間で済む。一番のメリットは、脳梗塞予防とともに、抗凝固薬から離脱でき、出血の恐怖からも解放されることだ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号