今年ほど名だたる企業の「威信」が低下した年も珍しい。業績不振で事業の切り売りに追われるシャープ、経営権を巡り“父娘ケンカ”に明け暮れた大塚家具、巨額な不正会計が明るみに出た東芝、不良エアバッグ問題で世界から批判を浴びるタカタ、そして、マンションの杜撰な杭打ち工事が発覚した旭化成建材……。
「企業が社会の公器であるならば、このまま組織を存続させる意味はどこにあるのか」――経営のリード役である社長が矢面に立たされる“謝罪会見”では、記者からこんな厳しい質問が飛び交うこともあった。
そんな中、師走に入り「経営手腕が光った今年の社長」が各調査機関から発表されるシーズンがやってきた。
例年、トップ10には孫正義氏(ソフトバンク)、豊田章男氏(トヨタ自動車)、柳井正氏(ファーストリテイリング)らの常連社長が名を連ねるが、度重なる企業の不祥事ばかりが目立った今年は、なかなか“新顔”が思い浮かばない。
当サイトでも毎年12月上旬、経済誌『月刊BOSS』編集委員の関慎夫氏に「キラリと光ったベスト経営者」を挙げてもらっているため、今年は他調査よりも一足先に聞いてみた。
※以下、関氏の人選と推薦理由
●吉永泰之社長(富士重工業)
クルマの販売台数、売上、利益ともに過去最高を記録。しかもROEなど経営指標はトヨタをはるかにしのぐ。日本のモノづくりへのこだわりを象徴する企業といえる。
●渡邉光一郎社長(第一生命保険)
前3月期決算の保険料等収入で日本生命を逆転。これは戦後初の快挙。2010年に株式会社化した時はその効果を疑問視されたが、銀行窓販を子会社で展開するなど、他の生保よりも責任体制を明確にしたことで業績を伸ばしている。M&Aにも積極的。渡邉氏は、株式会社化と同時に社長に就任した。
●岡藤正弘社長(伊藤忠商事)
中間決算で利益が商社トップに。他の商社と違い資源に過度に依存しなかったことが奏功した。同時に中国への6000億円投資を決断するなど、とにかく強気の経営者。この賭けに勝てば伊藤忠はダントツの商社に成長するだろう。