移民国家のアメリカでも、排外的な主張が強烈な存在感を見せている。来年の大統領選に向けた共和党の候補者レースを独走する不動産王のドナルド・トランプ氏である。
これまでも「(メキシコからの)不法移民の大半は違法薬物ディーラー」「私が大統領になれば国境に万里の長城を築く」といった発言を繰り返してきたが、ここにきてイスラム教敵視を鮮明にしている。
12月2日にカリフォルニア州の福祉施設で起きた銃乱射事件で容疑者の2人の男女がイスラム過激思想に共鳴していたことを受けて「イスラム教徒の入国を全面的に禁止すべきだ」と発言。ホワイトハウスは激しく非難し、共和党の議員からもブーイングを浴びたが、支持率は落ちていない。中岡望・東洋英和女学院大教授(アメリカ政治思想)はこう指摘する。
「少し前に訪米した時のことですが、テレビのニュース番組は彼の演説ばかりを流していて、相当な盛り上がりでした。アメリカではもともと、反エリート主義が根強い。賃金が上がらない中産階級以下の白人ブルーカラーの欲求不満を、トランプ氏は強烈な個性をもって代弁している。だから過激発言を繰り返しても支持層は離れません」
トランプ氏が「色物候補」「失言ですぐに脱落する」といわれながら、ここまで共和党候補者レースのトップを走り続けている所以だ。
※週刊ポスト2015年12月25日号