それでも、実質的には非課税となるケースも多い。ゼロクーポン債の売却益には課税する際50万円を差し引く特別控除という制度があり、売却益が50万円以内に収まれば課税の対象からはずれるからだ。しかも、保有期間が5年を超えると控除後の利益を半分にして税金を計算される決まりもある。それでもなお、50万円を超える利益があると総合課税の対象となるのだ。
結論としては、利益が50万円におさまるなら年内の売却が有利となるが、超える場合はその人の所得によって税率が異なるため判断も変わってくる。一般的に保有期間が5年以下で所得税率が20%を超えている人は、年内に売却するよりも年が明けてから20%の税率を適用されたほうが有利といえるだろう。
逆に売却損が出るような場合なら、年内に損切りしておくと給与との損益通算が可能になる。年明け以降だと損益通算の対象が株などの金融商品に限られるので、相殺できる利益が必ずあるとは限らない。年内に給与と相殺しておく方が確実なうえ、税率が高い人ほど節税効果も高くなるだろう。
ちなみに、ここで説明した債券に関する税制はすべて償還前に売却した場合に限られるので注意したい。償還を迎えてしまうと雑所得として総合課税の対象となり、年内であっても非課税の恩恵は受けられない。
また、これらの方法はあくまで節税の視点からの対策であり、当然ながら利益や損失を含めた損得は相場環境によって異なる。市場の動向をにらみながら慎重に判断してほしい。
■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー・ライター)
※マネーポスト2016年新春号