右京は、いまもアマチュアレースへの出場を自分に課している。この夏には、210kmを走破する「ツール・ド・おきなわ」出場のために、1か月半にわたって自らを追い込んだ。途中、GTレース、F1のテレビ中継の解説という仕事も重なって、目の回るような忙しさだったにもかかわらず、夜中に早朝にと睡眠時間を削って、2、3時間走りまくった。月に2000kmペースで走ったのだ。64kgあった体重は50kgにまで絞られていた。6時間に及ぶレースを右京は出場294人中74位で完走した。
「もはや苦行に近かったけど、練習は嘘をつかない、と思った。ああ、俺はこのスポーツが大好きだと改めて思いました。この先、この苦しさに比べたら何十倍もきついことがあるかもしれないけど、でも大丈夫、全然耐えられると自信を持ったんです」
そして、52歳のカミカゼ・ウキョーはこういうのだ。
「僕は、基本的に一生懸命頑張っているときが一番幸せなんです。生きている感じがして……。変態なんです。休みの日に風邪をひいちゃうタイプなんですね。だから、休まず、ずっと走り続けないといけないんです」(了)
◆かたやま・うきょう/1963年生まれ。神奈川県相模原市出身。1992年から日本人3人目のレギュラードライバーとしてF1参戦。F1引退後は、ル・マン24時間レース、ダカールラリーなどでも活躍した。現在は自転車ロードレースとモータースポーツに参戦する「チーム右京」を率いている
撮影■藤岡雅樹 取材・文■一志治夫