●第2位 立ち食い・ちょい呑み新ステージへ
立ち飲みバル業態などが定着するなど、飲食店の業態が多様化するなか、今年は「立ち食い」や「ちょい呑み」といった業態の躍進が目立った。先鞭をつけた吉野家の「吉呑み」に続き、各牛丼チェーンも「呑み」対応メニューの強化に注力。”立ち食いそば”業態からも、富士そばが店舗・時間限定で「ふじ酒場」に乗り出し、「1000円で飲める!」などと話題に。
さらに「一人でも焼肉が食べられる」と焼肉好きを歓喜させた立ち食い焼肉店も権勢をふるうようになった。海外に情報が知れ渡っているエリアでは、訪日外国人客に占拠されているような立ち呑み店まである。これまでの立ち食いや立ち呑みにまつわるネガティブなイメージは完全に払拭された。折からの日本酒ブームに後押しされての”角打ち”業態の躍進や、デフレを経て女性客の抵抗感も少なくなった2015年、一気に花開いた形だ。
●第1位 躍進! 後退……。肉ブームの光と影
もしかすると「肉=ごちそう」だった時代は終わっているのかもしれない。マクドナルドが置かれた苦境を見るにつけ、そんなことを思ってしまう。いまや「肉」というだけでは大衆の支持は得られなくなっている。前述の「立ち食い」もそうだが、何らかの付加価値が必要なのだ。
例えばハンバーガーなら、次々にシェイクシャックやカールス・ジュニアなどのハンバーガーチェーンが、目新しさをひっさげて上陸。ほかにも市ヶ谷に出店し、早くも名店との評判を取る「なかはら」店主が代官山にオープンさせた”本格派”のHenry’s Burgerには当たり前のように行列ができていたし、「フランス一の肉屋」という触れ込みで開店直後から予約数か月待ちとなった、同じく代官山のユーゴ・デノワイエでもハンバーガーは人気メニューだ。
「目新しい」「本格派」「フランス一」などのキーワードを例に挙げるまでもなく、われわれは”情報”を食べている面もある。だが本来「食」とは、とても個人的なものであり、どんな外部情報も食べ手自身が心を揺さぶられた体験にはかなわない。例えば、都内にも20年以上も続く”肉の名店”がいくつかある。彼らは常に研鑽を積み続けていて、味にも物語にも力強い腰がある。そういう店の物語が消費し尽くされることはない。
今年話題になった店が来年以降、どんな形で生き残っていくのか。肉のまわりはまだ熱い。