なぜ若者たちは高速バスを選択するのか。都市計画や鉄道に詳しいライターの小川裕夫さんによれば、旅する若者にとって鉄道の使い勝手が悪くなったからだという。
「人件費や設備投資などの問題からJRは夜行列車をどんどん廃止しています。いま東京都内から出発する定期運行の夜行はサンライズ瀬戸・出雲とカシオペアだけです。新幹線の最終を逃したビジネスマンにお馴染みだった東京と大阪を結ぶ急行銀河は2008年に廃止され、『青春18きっぷ』と組み合わせて使う人が多い『ムーンライトながら』も2009年3月から臨時列車でしか走っていません。昔なら夜行を選んでいた人たちが、高速バスを選んでいます。
速く移動できる新幹線や、カシオペアのような豪華寝台列車に比べて安価だということもありますが、最近の夜行バスは座席もバラエティに富んでいて選べますし、座席ごとに電源が用意され車内wifiでネット使い放題の車両もあります。まるで移動するホテルです。女性専用車両や、個室風などゆったり過ごしやすい座席が選べるようになったことで女性の利用者が増えたことも高速バス利用の後押しをしています」
最近、全国のバス会社が豪華座席の夜行バス向け車両を次々と導入しているが、その意匠はまるでホテルの女性向けプランのよう。たとえばカーテンや簡易パーテーションで個室のような座席、156度までリクライニングできるシート、無重力状態の快適睡眠が可能なシート、ライトつき鏡があるパウダールーム、各種アメニティ、イオン発生器、といった具合だ。
昨年から首都圏や関西圏のホテルは予約が難しく、高騰している。無理して高いホテルを確保するより、しっかり眠れる設備のバスで移動したほうがお得といえるかもしれない。