国内

7万部配布の『路上脱出ガイド』 家と仕事がある人にも有用

「路上脱出ガイド」とは

 年の瀬になると、路上生活者の越冬対策や協力するボランティア活動がニュースで報じられる。ご関心のある方は、今年はこんなことをしてみてはいかがだろうか。コラムニストのオバタカズユキ氏が紹介する。

 * * *
 毎年、年末になると「また都合がつけられなかった……」と悔やむことがある。いわゆるホームレスやネットカフェ難民などの年越しを支援する炊き出し活動に参加したいのだが、ここ10年以上なかなかそれを叶えられずにいるのである。

 なんでそんなことが気になるのかは後述するとして、今年もバタバタで炊き出し参加断念という感じだ。そのかわりに(という言い方は間違いかもしれないけれども)、関連情報を見つけたので拡散の手伝いをしたい。

 私が購読しているメールマガジンのひとつに、ソーシャルワーカーや対人援助職向けの『ソーシャルワークタイムズ』がある。その最新号の冒頭に掲載されていた記事が、かなり興味深かったのだ。

 記事の書き手は、同メルマガに初めて寄稿したというビッグイシュー基金のチーフコーディネーター・澤正輝氏。都会の街角で路上販売されている雑誌『ビックイシュー』をご存知の方は少なくないと思う。ビッグイシュー基金は、あの雑誌の発行元を母体に設立されたNPO認定法人で、澤氏によれば、〈路上生活者を含めた誰もが生きやすい社会の実現を目指している〉。

 そして、澤氏は、〈初回はビッグイシュー基金が発行している『路上脱出ガイド』のことを紹介します〉と筆を進める。〈路上から脱出するために必要な情報をコンパクトにまとめた、40頁ほどの冊子で〉、〈2009年から配布を開始し、今日までに全国各地で約70,000部配布しました〉という。

 この方面の話題はなるべくチェックしてきたつもりだが、恥ずかしながらそんな小冊子があるとは知らなかった。無料配布物とはいえ、約70,000部とは立派なロングセラーだ。〈しばらくは夜回りなどでの配布が中心でしたが、もっとたくさんの当事者に届けたいと思い、最近では公共図書館での配布やインターネット広告Google AdWordsを使った配布にも力を入れています〉とのことである。

 さっそく実物を見てみたい。冊子の紹介サイトのリンクが貼られていたので、入手方法を確かめようとクリックしたら、その小冊子をまるまるPDFでダウンロードできるサイトにすぐつながった。「路上脱出ガイド」の検索で上位表示されるはずだから、読者のみなさんも覗いてみてほしい。

 このサイトからダウンロードできるのは、『路上脱出ガイド』の東京23区編、福岡版、名古屋版、札幌版、熊本版の5種。ダウンロードはできない大阪編も含め、『路上脱出ガイド』はすべて送料のみの負担で希望者に送ってくれるそうだ。

 東京在住の私は、さっそく東京23区編をダウンロード&プリントアウトした。A4用紙で表紙も中身も一気に計27枚印刷できる。かなり文字が大きくなるが、この小冊子を必要とする人の中には老眼が進んでいるのに専用眼鏡がない人もいる、と想定しているのだろう。テキストの大半は総ルビ(すべての漢字にふりがなが付いていること)処理が施されており、一人でも多くの人が労せず情報を得られるよう気遣われていることが分る。東京23区編は、以下の「はじめに」から始まる。

〈生きていく上で、不安定なこの社会において、住まいを失うことは誰の身にでも起こりうることです。 
 この小冊子は、路上生活を余儀なくされている方、ネットカフェで寝泊りしている方など、住まいがなくて困っている人、また路上生活になる恐れのある人が活用できるサービスをお知らせするものです。
 今のあなたの状況に合わせて、これらの情報をお役だてください。
 今、つらい状況にいる方の明日への道しるべになることを願います〉

 そう、住まいを失うことは誰の身にも起こりうる。そのリアリティがある人とない人との感覚差が大きなことは知っているが、どんな大企業の正社員だってリストラ無縁では決してないし、心身を壊せばそれまで順調だった仕事も家庭もあっけないほどに崩壊しかねないのが、現代社会というものだ。

 私がホームレス問題を気にしたり、炊き出しに参加したくなったりするのは、自分の中に、いつ路上生活者になるか分からないという不安感があるからである。フリーランスは、数か月後の人生が見えなくて当たり前の身分なので、この職について四半世紀、ホームレスを目にするたびずっと「ヒトゴトじゃない」と感じ続けてきた。

トピックス

モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
前回は歓喜の中心にいた3人だが…
《2026年WBCで連覇を目指す侍ジャパン》山本由伸も佐々木朗希も大谷翔平も投げられない? 激闘を制したドジャースの日本人トリオに立ちはだかるいくつもの壁
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相、16年前にフジテレビで披露したX JAPAN『Rusty Nail』の“完全になりきっていた”絶賛パフォーマンスの一方「後悔を感じている」か
女性セブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン