というのも、法律が義務付けているのは、会社が役所に提出する書類にマイナンバーを記載することだけで、個人が会社にマイナンバーを教えることまでは義務付けていないから。そのため、会社はマイナンバーの提出を拒否した従業員に対して、査定でのマイナス評価や処罰を与えることはできません。
2016年1月1日からは、雇用保険と税金関係。2017年からは健康保険や厚生年金というように、会社が個人のマイナンバーを記入して提出しなければならない書類の種類は段階的に増えていきます。
具体的には、2016年は入社、退社した時、ハローワークで行う雇用保険の加入(資格取得)、脱退(資格喪失)の時の手続き。60歳以降の給料が60歳時点の時よりも75%未満に下がった時に支給される「高年齢雇用継続給付金」、そして育児休業中の「育児休業給付金」、介護休業中の「介護休業給付金」の申請書類。さらに、源泉徴収票です。
ハローワークでは、「マイナンバーの記載がない書類も受理」という方針を打ち出していますので、会社は従業員のマイナンバーなしで手続きはできます。けれども、原則の手続き方法とは異なるのは確かなので、通常よりも手続きに時間がかかるというデメリットが発生する恐れはあります。
また、会社は「従業員にマイナンバーを提出してほしいといったのに、従業員から拒否された」という経緯の物的証拠を残す必要があります。要は、マイナンバーの提出を拒否する人がいると、会社のマイナンバー担当者の仕事が増えるということ。
たとえ、マイナス評価や処罰はされなくても、マイナンバー担当者から「○○さんって、面倒くさい人」などと、煙たがれることは覚悟したほうがよさそうです。
●文/稲毛由佳(社会保険労務士)