ビジネス

「買い物代行業」運営のカラクリ 並んで買う場合の時給は 

買い物代行業、朝から夕方まで並ぶことも(Nori / PIXTA(ピクスタ))

 世の中には珍しい仕事がある。この人の年末年始は忙しかったそうだ。「買い物代行業」だ。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 年明けから本格的に仕事が忙しくなっている人も多いだろうが、この人の年末年始はどうだったのだろう。買い物代行業「東京空の下」を運営している森下昌宣さんである。

 買い物代行業とは依頼主の代わりにモノを買い、その代金と手数料をもらうビジネスである。元手が不要でネットに案内のホームページを立ち上げるだけで即座に「開業」できるとあって、サラリーマンの副業、起業としても注目されている。森下さんは2012年からこの仕事を始めている。

「お正月は福袋の買い物代行を依頼されることが多いです。去年は11件ありました。でも今年はまだ2件ですが」

 それは景気と関係しているのだろうか。

「いえ、元日の朝から並ぶとか大変な依頼は私の方からけっこう断っていたんで(笑)」

 えっ依頼を断るとは……?

「年末はコミケ(コミックマーケット)で同人漫画を買う依頼を受けて、朝8時から夕方5時まで並びましたよ。結局時間切れで買えませんでしたが」

 そういうときは依頼者から怒られないんですか。

「依頼主もツイッターで現場の状況をフォローしていたので、仕方ないですね、と理解していただきました」

 断ったり、買えなかったり、どうも想像していた様子とは違う。ちなみに取材場所は森下さんが住んでいるけっこう豪華なマンションのロビーである。建物を見たとき、「買い物代行業ってそんなに儲かるものなのか」と、もっとアブラギッシュな人を連想していたのだが、目の前のいる人は穏やかでどこかノホホンとしている。

「依頼は平均して週2回ぐらい。売り上げは去年でだいたい30万円です」

 一瞬、聞き間違いかと思ったが、年に30万円なのである。首を傾げる私の表情をみて、森下さんが笑いながら手を振った。

「あ、私の本業は個人投資家なんですよ。生活費はすべて投資でまかない、買い物代行業は趣味みたいなものなんですよ」

 森下さんはインターネット関係の企業に勤めていた経験があり、「ネットにサービスを立ち上げる」ということが好きで、買い物代行以外にも海外用のショッピングサイトを制作したり、LINEの「スタンプ」作り(!)までやっているのだという。

「買い物代行業は元手がかからないし、暇な昼間の時間帯を使えるのでいいんです。あんまり大変なのは断っちゃうし(笑)」

 依頼で多いのは、「インターネットでも手に入らないもの」。たとえば地方発送をしていないお菓子だったり、漫画家のサイン会でのサイン、コンサートの限定グッズなどだ。

「お菓子の依頼はけっこう多いですね。2月に入るとバレンタインデー狙いで銀座のレアものチョコレートを買う依頼が重なります。グッズ系の依頼は定期的に入ります。ある限定ものの人形を買いにいったんですが、興味の無い私にはなにがいいのかさっぱりわからない(笑)。でも行くと大行列で、『いまこういうのがブームなのが』と勉強になりました」

関連記事

トピックス

アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
TikTokをはじめとしたSNSで生まれた「横揺れダンス」が流行中(TikTokより/右の写真はサンプルです)
「『外でやるな』と怒ったらマンションでドタバタ…」“横揺れダンス”ブームに小学校教員と保護者が本音《ピチピチパンツで飛び跳ねる》
NEWSポストセブン
復帰会見をおこなった美川憲一
《車イス姿でリハビリに励み…》歌手・美川憲一、直近で個人事務所の役員に招き入れていた「2人の男性」復帰会見で“終活”にも言及して
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
複座型ステルス戦闘機J-20 米国のF-35に対抗するために開発された。第5世代ステルス戦闘機(写真=Xinhua/ABACA/共同通信イメージズ)
【中国人民解放軍「最新兵器」】台湾侵攻や海上封鎖を想定した軍事演習も 就役直後の最新空母、ステルス戦闘機から“犬型ロボット”まで、性能を詳細に分析
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相の「官僚不信」と霞が関の警戒 総務大臣時代の次官更迭での「キツネ憑きのようで怖かった」の逸話から囁かれる懸念
週刊ポスト
喫煙所が撤去されてホッとしていたのだが(写真提供/イメージマート)
《規制強化の動き》加熱式タバコユーザーのマナー問題 注意しても「におわないからいいじゃん」と開き直る人、タクシー車内で喫煙する人も
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン
現在は三児の母となり、昨年、8年ぶりに芸能活動に本格復帰した加藤あい
《現在は3児の母》加藤あいが振り返る「めまぐるしかった」CM女王時代 海外生活を経験して気付いた日本の魅力「子育てしやすい良い国です」ようやく手に入れた“心の余裕”
週刊ポスト
上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン