一例は、ハワイ・オアフ島のワイキキに建設中のツインタワーのホテルコンドミニアム「ザ・リッツカールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」だ。部屋を買ってリッツカールトンに貸し出せば4%前後の利回りが見込めるということで、日本をはじめ世界中の投資家が殺到している。
今年完成する1棟目のウエストタワーはすでに完売し、来年完成する2棟目のイーストタワーも残り戸数は少ないようだ。私の友人は発売された2013年に1億5000万円の部屋を3戸買い、それが2億5000万円に値上がりしたので1戸売却した。まだ建物が完成していないのに、1億円儲けたのである。いまハワイをはじめ世界中のリゾート地でラグジュアリーホテルが続々と建設されているが、その理由がここにある。
まだ日本では、このモデルはほとんどないが、本格的に導入されたら、高級ホテルがどんどん建設されるだろう。そして、そこではホスピタリティ・マネージメントの勝負になる。
日本では星野リゾートが運営会社を志向して健闘しているが、私は拡大を急ぎすぎているのではないかと危惧している。代表の星野佳路さんは友人であり、合理的なマルチタスク制を導入するなどホテル・旅館業界では群を抜いた経営センスを持っていると思う。日本の“おもてなし”を独自に磨き上げた「旅館メソッド」という強みもある。
しかし、いかんせんホテルや旅館というのは労働集約型産業であり、サービス業はダスキン創業者の鈴木清一さんが言っていたように「100-1=0」の宿命にある。つまり、お客は何か一つでも印象が悪いと、リピートしてくれないのだ。その原則は「民泊」であろうとラグジュアリーホテルであろうと変わりはない。訪日外国人客が急増する中で、規模と質をどう両立させるかが、ますますシビアに問われていくだろう。
※週刊ポスト2016年2月5日号