難民の受け入れに積極的にならないとすれば、日本の役割は何か。難民の人たちがその場で安心して生きていけるように支援することなのではないか。
シリア難民の看護師リームさんは、ぼくたちNPOのスタッフとなった。妊産婦支援や保健予防活動に力を尽してくれている。ヨーロッパへは行かないのか、と尋ねると、「私はクルド人。クルドのためにここで働きます。そして、シリアに帰れるようになったらダマスカスに帰ります」と言う。
今年もぼくたちのNPOは、現地の人たちを巻き込みながら、シリア難民の支援を続けていく。医療支援を軸に、健康づくりや生きがいづくりをすすめ、農園での野菜作りやアラブ風おでんの屋台など、雇用の場も広げていきたい。
今年こそ、日本的な支援の出番だと思う。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。
※週刊ポスト2016年2月19日号