〈飲みに行く相手は毎回職場の仲間や特定の取引先で、会話といったら噂話か事務的な話のみ。これでは動脈硬化ならぬ「人脈硬化」を引き起こす。視野が狭まり、社会の変化についていけない〉
これは日経新聞(1月25日付夕刊)に掲載された「仕事力 老化してない?」という記事の一節である。長年、会社勤めを続けていると、つきあう相手が固定化して、動脈硬化ならぬ「人脈硬化」が起きて、だんだん世の中から取り残されていくというのだ。
この記事が、世のビジネスマンたちの大きな共感を集めたのだ。中堅メーカーで課長を勤める男性(50)がいう。
「完全に私のことだと思いました。同年代の付き合いも気心の知れた一部を除いてだんだんなくなり、事務的な取引先との会食を除けば、職場の若い奴らを連れて飲みに行くばかり。
ダメだとわかってても、偉ぶって昔つくったヒット商品の苦労話をついついしちゃうし、彼らの話を聞いてやろうと思っても、どうしても心の中で『甘えてんなぁ』と思うから、油断すると説教臭くなる。職場の人間と飲んでても得るものなんかないんだけど、いまさら自分から友達なんて作れないし。人間関係が狭まっていくのがよく分かります」
思い当たるふしがある人も多いのではないか。昼飯を食うのも飲みに行くのも、いつも同じ社内のメンバーで、話すことといえば、飽きもせず人事や給料の話。それから嫁さんや子供への愚痴である。経営人材コンサルティング会社、経営者JPの井上和幸CEOはこういう。
「同僚とのつきあいが悪いというわけではありません。それはそれで重要ですが、同じ同僚とばかりだと、外界から置いてきぼりになって、いわゆるガラパゴス化してしまうのです。同僚以外の人間ともつきあい、新しい人からの刺激を受けないと、ビジネススキルも、仕事の仕方も老化します」
気の合う人とずっと一緒にいるのは、居心地がいいし、気を遣わなくていいので確かに楽である。しかし、そこに安住してしまうと、仲間内だけで、限られた情報や古いビジネススキルがぐるぐる回り続けるだけになり、気がついたときには同僚ともども世間から取り残されている。
さらに人脈硬化が慢性化してくると、むしろ本人は意固地になってきて、“症状”はさらに悪化する。新しいことに取り組んだり、新しい知識を得ることに拒否感を示し、否定するようになっていくのだ。