また、初子さんが入院していた間、娘たちは見舞いに行くことはあっても、付き添ったことがないこともわかっている。

 本来ならば、血のつながらない他人より、実の子に遺産を残すのが筋なのだろう。しかし初子さんにとっては、大人になってもなお金の無心をしてくる娘よりも、50年以上にわたって吉岡家に仕えた美津さんを信頼していたのではないか。その気持ちが、“全ての財産を譲る”という遺言につながったと考えるのは不自然なことではない。

「娘側は、初子さんは外出が好きではなかったとか、質素で倹約家だったなどと主張して、もっとあったはずの資産が3000万円しか残っていないのは、美津さんが意のままに資産を“使い込んだ”からだと主張しました。

 しかし、ペナン島から戻った娘が突然同居してきたことに、初子さんは戸惑い、さらなる無心を受け、あげくは資産を奪われるのではないかと不安で、外出もできないと恐れていたことが明らかになった。また、預金口座の入出金記録などから、美津さんが資産を着服しているとは認められないと判断されました」(前出・社会部記者)

 裁判官は、娘たちが《自身らの主張に関する点については相当程度過去の出来事であるはずながら明確に記憶しているかのごとく述べるのに対して、自身の不自然な点等については「記憶がない」などとあいまいな供述を繰り返している》とし、また《自身らが認める範囲以上に、初子から援助を受けていたものと見るのが相当であり、これが(主たる要因とまではいえないものの)初子の財産が減少した一因であると考えられる》と断言した。

 裁判では、娘たちが有効性に疑問を抱いていた遺言書についても、当時の医師の証言や弁護士とのやりとりから、「有効」だと判断された。

《遺産も減少し、初子自身の生活も不安定な状況となりながら、一方では長年にわたり多額の援助をしてきた被告ら(娘たち)が、さらに初子の援助を受けてペナン島に移住してしまい、初子の面倒を見ることを放棄してしまった》

 一方で、美津さんだけは、《初子に常に付き従ってきた》と認め、美津さんへの感謝の念とそれまでの恩に報いる思いは、《本件遺言において実現したものと認めるのが相当》と結論づけたのだ。

 つまり、「介護せず資産のみに執着する実娘と違い、献身的に仕えてきた家政婦に遺産で報おうとする心情は自然」「遺言は不自然ではない」ということなのだろう。

※女性セブン2016年2月25日号

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