このドラマを一級品に仕上げているカメラワークが、またスリリングだ。手持ちのカメラは速度感に満ち、視聴者はまるで主人公と一緒に走っているような錯覚に陥る。
望遠レンズで捉えられた風景は、絵画のように美しい。人物のアップに重なる背景のボケ味は一層、アートのように風景を演出してみせる。
役者、脚本、演出。ドラマを構成する三つの要素が、有無を言わせない水準にあるだけではない。「ドラマゆえ」の強みも発揮している。
映画館で一度にまとまった時間の中で見せられるのとはまた質の違う、ドラマにしかできない連結的スリル感。シリーズだからこそ、また次、また次へと物語が繋がりながら加速しつつ転がっていく、独特の面白さがある。連続ドラマという形式をロードムービーと合体させ、上手に活かしている。
でも、このドラマが「日本のドラマ史に残る」作品になっているとすれば、そこにもう一つ、ある要素が加わったからに違いない。
「偶然」という要素が。
そもそも仲里依紗がこんな「怪優」だと知っている人が、どれくらいいるのだろう。『今日は会社休みます』(日本テレビ)では恋愛体質のOLを上手に演じていた。それが彼女の等身大の姿に近いと受け取っていた視聴者も多いだろう。
あるいは、テイラー・スウィフトの大ファンと公言し「テイラー女子」の代表として、NHK『SONGS』(2014年11月30日)でテイラーにインタビューしていた仲の姿は、二十台半ばのイケイケねえちゃん、そのものに見えた。
でも間違いなく、仲里依紗の中にはあったのだ。狂気に満ちた演劇の魂と才能とが。この脚本と演出に偶然出会い、その能力は思い切りスパークした。外へと迸り出た。「偶然」という名の幸運を手にする役者は、限られる。
だからこそ、仲里依紗のこれからに心から期待したい。もちろん、「社会にじわーっと漂う不安」を刑事モノや医者モノストーリーに依存せずに描く、テレビドラマにしか創造できない「離れ業作品」の誕生にも。