回答がないので、これ以上のことはわからないが、現場からはドラマの内容かそれ以上だという声があがっているのは事実だ。河合さんが言う。
「たくさんの介護福祉士が“それなりの報酬を得ている”なんてことはありえません。“女性ではあまり差がない”というのも、それはパート勤務の女性と比べているのではないでしょうか。福祉施設の介護員の月給は、常勤で21万9700円、訪問介護員(ホームヘルパー)は22万700円で、全産業平均の32万9600円より約11万円も低い。介護計画を作るケアマネジャーも26万2900円と全産業平均を下回る。しかも、これは平均値で、施設長なども含まれているので月給13万、14万という人も多いです」
また、河合さんは、意見書の“2勤務(16時間)するような場合も多い”という文言にも意見する。
「本来は、日中・夕方・深夜と3つの勤務時間に分けた3交代制が望ましい。そうしなければ、職員は疲弊するし、現場の引き継ぎもうまくいかない。なのに、2勤務が当たり前のように書かれているのも問題です」
安倍政権は昨年4月「介護職員の給与を1万2000円アップする」ことを打ち出した。しかし、1年が経とうとする今、それが本当に実現されたかの調査を厚労省が実施するとしていたが、結果は発表されていない。また、アップさせなくても罰則はない。
「介護に従事しているのは介護職員の人だけではありません。事務職員、清掃員など多くのスタッフがかかわっていますが、給与アップの対象は介護職員だけ。また、月額1万2000円アップではなく、ボーナスとして支給する施設も多い。
これでは現場で働く人の環境が改善されるとは到底思えません。老人福祉・介護事業の倒産件数は過去最高。介護報酬引き下げは経営にもマイナスです」(河合さん)
しかも、厚労省は膨らむ社会保険費を抑えるために、2018年度から「要介護1、2」に認定されている軽度の人を対象とした介護サービスの費用を、全額自己負担にすることを検討し始めた。河合さんが言う。
「高齢化社会になって、介護や医療にかかる社会保険費の増加が国の財政を圧迫しています。政府は3世代同居を打ち出し、保険の対象となる要介護度を上げようとしている。高齢者の介護を家族に押しつけようとしています」
日本介護福祉士会が意見すべきは、本当にフジテレビだったのだろうか。副会長が、厚労省の審議会のメンバーなのであれば、その審議会で現場改善の声をもっと強くあげるべきなのではなかったか。
国からの助成金を活動費の一部にあてる団体にそれを望むべくもないのか――
※女性セブン2016年3月24日号