ビジネス

モッズ・ヘア買収の中国人投資家「日中経済活性化させたい」

 経営再建中の東芝が中国の家電大手「美的集団」と白物家電の事業売却について最終調整に入ったと報じられている。台湾企業の鴻海精密工業におるシャープ買収と同様、アベノミクスの円安誘導路線は皮肉にも、中国による日本企業の“爆買い”を促している。

 いざというとき──それは、今回の東芝の事例を見ればわかるはずだ。中国企業はいまのところ、日本に対して敵対的な買収を仕掛けては来ない。

 2009年の蘇寧電器によるラオックス買収、あるいは2011年のハイアールによる三洋電機の白物家電事業買収にしても、経営危機に陥った日本企業に救いの手をさしのべる形で、中国企業は姿を現わした。

「強引に力でねじ伏せるように買収する戦術は取っていない。あくまで日本側からお願いされたら、その企業を引き受けるという姿勢を見せるのが、中国企業のやり方です」(シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト田代秀敏氏)

 本誌は、日本企業の買収を進める中国系投資ファンド「剣豪集団」の会長、鄭剣豪氏に話を聞いた。同社は昨年6月、「モッズ・ヘア」サロンの運営などを手がける日本の美容室チェーン、MHGを買収し話題を呼んだ。鄭剣豪氏は、日本企業の買収についてこう語る。

「中国のビジネスをさらに発展させるには、技術力やノウハウを持つ日本企業の協力が必要です。そのために、資本の力で日本企業を押さえつけるのではなく、あくまで投資家として会社経営のアドバイスを行なっています。

 MHGは、日本人の手先の器用さやサービスの細やかさという価値を持っている企業ですが、日本では美容師が規制に縛られて事業を拡大できない。そこで中国に信頼ある日本ブランドの企業として進出させることにしたのです。

 私は日本の明治、昭和の企業家を尊敬し、ホンダやトヨタの経営者に憧れています。しかしいま、日本企業の多くがサラリーマン経営者となり、気概が失われていると感じている。投資事業を通じて、私自身が日中経済を活性化させたいと考えています」

 中国の投資家たちから見れば、もはや日本企業は中国の手を借りないと再生できないものとして映っているのだろうか。

 中国企業への買却が固まりつつある東芝の社内には、「不利な条件を出されて買いたたかれることになっても、逆らえる状況にないとの白旗ムードが広がりつつある」(経済誌記者)という。

 もしそうなれば、中国資本の東芝の製品を、中国資本のラオックスで売り、中国から来た観光客が買うという光景が日常となる。まるで日本は、中国の「経済植民地」への道を進んでいるかのようだ。

※週刊ポスト2016年4月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

”シカ発言”を受けて、日テレのニュース番組がまさかの事態になっている(時事通信フォト)
《日テレ“検証番組”が大炎上》「もはやネットリンチ」高市早苗の“シカ発言”で擁護派が過激化 日本テレビを〈仕込みの役者がインタビュー〉〈偏向報道〉と批判 関係者は「事実無根」とバッサリ
NEWSポストセブン
たばこ祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《杖と車椅子で10メートルの距離を慎重に…》脳腫瘍のLUNA SEA・真矢が元モー娘。の妻と夫婦で地元祭りで“集合写真”に込めた想い
NEWSポストセブン
"外国人シカ暴行発言”が波紋を呼んでいる──(時事通信フォト)
「高市さんは1000年以上シカと生きてきた奈良市民ではない」高市早苗氏の“シカ愛国発言”に生粋の地元民が物申す「奈良のシカは野生」「むしろシカに襲われた観光客が緊急搬送も」
NEWSポストセブン
「めちゃくちゃ心理テストが好き」な若槻千夏
若槻千夏は「めちゃくちゃ心理テストが好き」占いとはどこが違うのか?臨床心理士が分析「人は最善の答えが欲しくなる」 
NEWSポストセブン
直面する新たな課題に宮内庁はどう対応するのか(写真/共同通信社)
《応募条件に「愛子さまが好きな方」》秋篠宮一家を批判する「皇室動画編集バイト」が求人サイトに多数掲載 直面する新しい課題に、宮内庁に求められる早急な対応
週刊ポスト
ポストシーズンに臨んでいる大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ポストシーズンで自宅の“警戒レベル”が上昇中 有名選手の留守宅が狙われる強盗事件が続出 遠征時には警備員を増員、パトカーが出動するなど地元警察と連携 
女性セブン
「週刊文春」の報道により小泉進次郎(時事通信フォト)
《小泉進次郎にステマ疑惑、勝手に離党騒動…》「出馬を取りやめたほうがいい」永田町から噴出する“進次郎おろし”と、小泉陣営の“ズレた問題意識”「そもそも緩い党員制度に問題ある」
NEWSポストセブン
懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
浅香光代さんの稽古場に異変が…
《浅香光代さんの浅草豪邸から内縁夫(91)が姿を消して…》“ミッチー・サッチー騒動”発端となった稽古場が「オフィスルーム」に様変わりしていた
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン
部下の既婚男性と複数回にわたってラブホテルを訪れていた小川晶市長(写真/共同通信社)
《部下とラブホ通い》前橋市・小川晶市長、県議時代は“前橋の長澤まさみ”と呼ばれ人気 結婚にはまったく興味がなくても「親密なパートナーは常にいる」という素顔 
女性セブン