武雄市図書館は年中無休で、朝9時から夜9時まで開館。それにより、利用最多の年齢層は30~40代となった。この人たちは子どもを連れてくる。親が本を読む姿を見て育った子は、自然に本に興味をもつようになる。
こうした公共図書館の民間委託は全国各地で始まっている。新しい動きのなかで、トラブルもあるが、改善すべきは改善して、利用しやすい図書館が増えることはうれしいことだ。武雄市図書館では、蔵書に「適切ではない本」が含まれているとし、批判が上がった。現在は図書館司書の判断で本の購入目録が決められ、教育長の承認を必要とするようにして改善に努めている。
全国学校図書館協議会と毎日新聞の調査では、2015年の1か月間の平均読書冊数は、小学生は11.2冊、中学生は4.0冊、高校生は1.5冊だった。小学校では、朝の読書の時間をもうけているところも多い。そのためか、1985年の6.5冊と比べて2倍近く増えている。中学生も1.9冊から4.0冊へと増加。しかし、高校生ではずっと横ばいだ。受験勉強があるから仕方ないのかもしれないが、残念である。
そして、大人になると、仕事が忙しい、子育てが大変、という理由で、さらに本から遠ざかってしまう人も多い。
東日本大震災のとき救援物資として食糧や薬、衣類が求められたが、程なくして「本を読みたい」という声も上がった。本は生涯を通じてつきあうものであり、人生の苦難に遭ったときこそ、必要になるのである。
いま新年度を前にして、子どもたちに本を贈る人もいるだろう。子どもに一冊、そして自分に一冊、本を贈ってみるのはどうだろうか。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に『「イスラム国」よ!』『死を受けとめる練習』。
※週刊ポスト2016年4月8日号