「部員が事実と異なることを顧問に伝えて、先生は息子に事実確認をすることなく、すっかり鵜呑みにしていたんです。先輩部員数名を集めた場に呼び出し一方的に責め立て、退部も迫られました。帰宅した息子は、先生に『なんのことかわかっているよな』と言われて、とりあえず『はい…』と答えたら暴言を吐かれた。『何のことですか』とは怖くて聞けなかった。先生が何のことを言っているのか、なぜこんなことになったかもさっぱりわからない、と話していました」(加奈子さん)

 顧問からは条件付きで部活を続けることを許された。条件が“宣告”されるその朝、息子は部活動のために登校したが、音楽室には足が向かなかった。部活が生きがいだった彼は線路に立ち入り、二度とトランペットを吹くことはなくなってしまった。

 広島県東広島市に住む大畑祐二さん、京子さん夫妻(仮名)は、2012年10月に中学2年生だった息子を亡くした。享年14。

 1年に及ぶ抑圧的な生徒指導がその原因とされているが、その理由は、「担任の悪口を言っていたようだ」「掃除時間に教師が話している時に笑った」「美術で使うかぼちゃで遊んだ」などというもの。他の生徒たちと一緒になって遊んでいたとしても、決まって息子だけが呼び出されて指導され、担任教師のみならず所属していた野球部にも知らされて、繰り返し、指導を受けた。

「教師に暴言を吐いたとして指導を受けた際は、『指導室』に3日間隔離され、終日反省文を書かされました。その間はもちろん授業は受けられないし、他の生徒さんと時間をずらして登下校しました。作文の内容に教師のOKが出るまで何度も書き直し、最後の作文には校長印が押されていました」(母・京子さん)

 亡くなる4日前にも別室で半日間指導を受け、度重なる指導で部活の背番号はエース番号の1番から18番へ。部員が17人しかいない中での18番は、戦力外通知も同然だった。

「人一倍努力していた息子にとって屈辱的だったと思います。指導は“決めつけ”が多かったんです。『〇〇だよね』『〇〇したよね』と一方的に叱られました。誰か息子の話を聞いてくれていたのだろうか。普段の息子の様子を見た上で公平に指導をしてくれたのだろうか。疑問しか残りません」(父・祐二さん)

 かぼちゃで遊んだことを4人の教師から指導され、部活をする資格がない、帰れと言われた彼は、帰宅途中の公園で、野球部の備品のロープで首を吊った。

 前出・大貫さんは、責任感の強い子供、真面目な子供ほど、追いつめられやすい傾向にあると指摘する。

「部長や学級委員などであまり逸脱の体験もなく、親との関係が良好で心配をかけたくない子供は、例えば『自分が責任者なのにルール違反をしたために部活停止にされそうになって、みんなに申し訳ない』とか、そんなふうに負担を背負ってしまうんです。もちろん、彼らの年齢もあるでしょう。成長過程にある多感な子供たちは行きすぎた指導によって自信を失い、それにより自己肯定感が極端に低くなってしまうのです」

※女性セブン2016年4月14日号

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