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オーストラリアの美容医療で研修や教育、広告制限など非外科的治療の規制強化、未成年はカウンセリングから7日間無条件で取り消し可能に、2025年9月から開始、インフルエンサーの活動も制限

(写真/イメージマート)

美容医療に関連した規制強化が従来進んでいたオーストラリア(写真/イメージマート)

 オーストラリアでは美容医療に関連した規制強化が従来進んでいたが、2025年9月から非外科的治療に関連する規制強化が開始される。

 美容医療に関与する医療従事者は特別なトレーニングや教育を受けることが必要になるほか、18歳未満の施術については初回カウンセリングから7日間のクーリング・オフ期間の設定が義務付けられる。インフルエンサーの活動を含めた広告の規制も強化される。

追加研修を義務化

・非外科的治療に追加トレーニング義務:医師・看護師などの医療従事者が非外科的施術(ボツリヌス療法やフィラー注入など)を行うには、資格に加えて専用の研修や教育の受講が義務付けられる。
・広告規制の強化:SNSインフルエンサーによる推薦や、気軽さ・性的表現を含む広告は禁止され、施術者の情報を明記することが義務化された。
・安全性向上を目的とした全国適用:2025年9月2日施行の新ガイドラインは、オーストラリア全域の医療関係者に適用され、美容医療トラブルの防止と消費者保護が目的。

 オーストラリアではかねて美容医療での規制強化が進められていた。オーストラリアでは、非外科的治療を行えるのは、医師のほか、ナースプラクティショナー、登録看護師となっている。従来、同国内では、製剤の購入に医師の関与を求めるなどの規制強化が進んでいた。

 2025年6月3日、医療にまつわる制度に関わるオーストラリア医療従事者規制庁(Ahpra)が、関連委員会と連携し、非外科的治療を行う医療従事者を対象としたガイドラインと、高リスクの非外科的治療を広告する医療関係者に向けてのガイドラインを公表した。施行は同年9月2日で、全国すべての医療関係者に適用される。ボツリヌス療法や各種のフィラー注入などの規制強化につながるものとなる。

 美容医療関連のトラブルが問題になる中で、安全性を高めることが目的だ。今回は、ガイドラインの名前の通り、非外科的治療に関連した施術と広告についてのルールが整備される。

 施術に関連しては、医療関係者が非外科的施術を行う際に、それぞれの資格の最低限の条件を満たすことに加えて、非外科的治療に関連した追加のトレーニングや教育を受けることが義務付けられる。特に看護師は、特別な研修を修了することが求められる。

 広告についても規制が強化される。

 広告には施術者の情報を含めることが義務化される。SNSインフルエンサーによる推薦を含む広告表現は禁止される。非外科的治療を気軽に受けられる印象のあるものに扱ったり、性的な表現を使ったりして広告することも禁止される。

未成年への広告全面禁止

・未成年者のクーリング・オフ義務:18歳未満が非外科的治療を受ける際には、初回カウンセリングから施術まで7日間のクーリング・オフ期間が必要となり、施術を無条件で取り消すことができる。
・18歳未満への広告禁止:未成年者を対象としたすべての非外科的治療の広告が全面的に禁止され、若年層への施術誘導を防ぐ。
・国際的に注目される制度:近年、非外科的美容処置に関する苦情が増加しており、オーストラリアの規制は他国に参考とされる可能性がある。

 もう一つ、注目されるのは、未成年者の保護に関するルールだ。18歳未満の者が非外科的美容処置を受ける際には、初回カウンセリングから施術までの7日間の「クーリング・オフ期間」が義務付けられる。つまり施術を無条件で取り消せるようになる。18歳未満の未成年者を対象とした広告は全面的に禁止される。

 Ahpraによれば、2022年9月から2025年3月までに非外科的美容処置に関連した苦情は約360件寄せられ、そのうち300件は解決が図られた。苦情の対象は、医師、看護師、助産師、歯科医、心理士、中国医学従事者に及んだ。

 オーストラリアの美容医療に関連する規制は国際的にも進んでいるとされ、他国でも参考にされる可能性がある。

参考文献

Extra training and greater protection for young people part of raft of new safeguards

フィラー注入に「医師関与」など規制強化、オーストラリア州政府が指針、ナース主体のクリニックに衝撃広がる、クイーンズランド州保健当局の5ページの書面で発表

オーストラリアが推し進める、美容医療規制の新潮流、アラガンレポートより

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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