芸能

テレ東大食い番組 参加者の個性を光らせた中村ゆうじの実況

27年実況を務めた中村ゆうじが卒業(番組公式HPより)

 俳優でタレントの中村ゆうじ(59)が、4月3日放送の『元祖!大食い王決定戦~爆食女王新時代突入戦から』をもって、テレビ東京の大食い番組の実況を卒業する。番組の顔ともいえる中村の突然の卒業発表に驚いた番組ファンも少なくないだろう。報道によれば、番組内で中村の口から卒業が発表されるというが、番組回数が年齢に追いついた(今回で59回)ことで次世代へのバトンタッチを決意したようだ。

 それにしても驚くべきは、この番組が『TVチャンピオン』時代を含め、27年も続いているということだ。雑に言ってしまえば、ただ食べているだけの番組である。それなのになぜ、これだけ長く視聴者の支持を得てこられたのか。

 元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんはこう解説する。

「食べるという行為は誰にでもできることですが、大食いというのは普通の人には真似できない特別なことです。扱っていることは身近だけれど、出てくるのは特殊な人たち。昔からテレビ番組の王道として“ビックリ人間”のジャンルがありますが、大食いもその一種として続いてきました。

 他のビックリ人間番組と違うのは、参加者同士を競わせたところです。一人の人が大食いしているのをただ見せるのではなく、競争の形にしたことで、次から次にスターも生まれました。これも長く続いた理由の一つです」(碓井さん・以下「」内同)

 元祖大食い女王の赤阪尊子、タレントとしても活躍中のギャル曽根、アメリカでスターになった小林尊、そのライバルとしてフードファイト・ブームの一角を担ったジャイアント白田など、番組を盛り上げたスターたちは数知れない。

 誰でもわかる単純な内容。次々と現れる大食いスター。ヒット番組の条件は揃っていた。その中での、中村ゆうじの存在とは?

「中村さんの実況は、アナウンサーなどの実況とは全く違います。実況者というより、むしろ参加者たちの伴走者、または応援者に近い。大食いを競技として見せるだけでなく、参加者たちの人間性や魅力をも引き出していました。

 中村さんが実際に言葉にして言っていたわけではありませんが、しょうがないことをやっているな、バカバカしいことをやっているな、でも愛しいじゃん! というところまで伝えてくれている。批評めいたことを言わなくても批評性が入っていましたし、見るポイントも視聴者にわかりやすく教えてくれていました」

 誰よりも大食いの参加者たちを愛していたのは、バトルを間近で見ていた中村だったのだろう。でなければ27年も続いたことの説明がつかない。中村がいたからこそ、参加者たちの個性が光ったともいえる。

 テレビ東京の高橋雄一社長も定例会見で、「食べることを競技やエンターテインメントとして盛り上げてくれた」と中村に対して感謝とねぎらいを言葉を述べた。大食い番組はテレビ東京が火付け役となり他局にも広がったが、ブームが下火になってからも続けていたのは同局だけだ。最大の功労者でもある中村を失った大食い番組は、今後も続くのだろうか。

「テレビイベントとしてもはや一つの風物詩となっているので、まだまだ続くんじゃないでしょうか。番組の方向性としては、変にいじらないほうがいいと思います。この手の番組は、タレントを出してもそんなに盛り上がりません。素人でとんでもない人が出てくるから盛り上がる。人間に迫る、いわばドキュメントバラエティー要素の強い番組だといえます。テレ東には中村さんという存在があったので、それが成立していました」

 中村の後任は未定とのことだが、いかに人間ドラマを見せられるかが今後のカギを握りそうだ。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン