ビジネス

【宅配業界の深層対談3】価格競争の限界と業界の行く末

もし小倉昌男が生きていればどうなったか(写真はイメージ)

 現代のインフラとも呼ばれる宅配便ビジネス。その最大手であるヤマトの「宅急便」を創設した小倉昌男氏の知られざる素顔に迫った『小倉昌男 祈りと経営』(森健・著)と今日の宅配業界の実態や問題点に迫った『仁義なき宅配』(横田増生・著)。話題書著者2人による異色対談の第3回は、宅配ビジネスの今後の展望がテーマとなった。(全3回中、第3回)

──小倉昌男は1995年にヤマトの経営から退き、2005年に亡くなります。彼の晩年の謎に迫ったのが森さんのご著書だとすると、引退後、激変していった宅配便業界の現状を記したのが横田さんのご著者だといえます。その変化をもたらしたのが、2000年に日本での業務を開始したアマゾンをはじめ、通販業界によるECビジネスの成長です。横田さんのご著書のテーマである、宅配業界の価格競争によるシェア争いの現状を見ると、「サービスが先、利益は後」という「小倉イズム」は果たして継承されたのか、という疑問を抱いてしまいます。

森:小倉さんが退任してからのヤマトの経営陣は、会社の土台を作ってくれた人として彼を尊敬しているでしょうが、いまのビジネスに反映されているかはなんとも言えません。東日本大震災に際しての、142億円という東北への並外れた寄付は、小倉さんのDNAが息づいているという気はします。ただ、横田さんのご著書にあったような過重労働や残業代未払いの問題を見ると、「小倉イズム」がどこまで生きているのか、疑問を抱いてもおかしくない。

横田:2000年にアマゾンが日本に上陸し、宅配便業界は大きく変わりました。小倉イズムが通用したのは、彼が想定していた年間の取扱個数が数億個のレベルまで。いまやヤマトは、年間18億個の荷物を運ぼうとしています。そうなると、いくら「荷物を大切にしろ」と言われても、それを運ぶだけで精一杯。僕が潜入取材をした羽田クロノゲートも、ギリギリの運賃で利益を出しているので、「サービスが先」とはなかなか言えない状況です。正直、そうした現場を「小倉さんが見たら何と言うんだろう?」と思いました。

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト