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【宅配業界の深層対談3】価格競争の限界と業界の行く末

『仁義なき宅配』の著者・横田増生氏


森:物流業界の裏側をここまで詳しく描いたのは、横田さんのご著書が初めてでしょう。宅配便の送料が、わずか10円単位で変動しただけで利益が生まれななくなることに、そして、そこまで価格競争をしないいけないくらいの状況だということに、正直、驚きました。宅配業界がゲートウェイなどの設備投資をしつつ、ギリギリの過当競争をしているのは一見無謀に見えますが、そこで占有した先行者利益を維持して逃げ切ろうと将来を見据えてのことですよね?

横田:ヤマトの前期の決算短信を見ると、取り扱う宅配便の数が前期の16億個から今期は18億個に増えるとして計画を立てているのですが、運賃単価は20円下げるというんです。つまり、ヤマトは取り扱う宅急便の個数を増やすことを目標としているんですね。その点について、僕は「送料が安すぎませんか?」とことあるごとにヤマト運輸の経営陣に訊くのですが、通販業界の「送料無料」の流れには抗えない。

森:僕も2006年に『グーグル・アマゾン化する社会』という本を書きましたが、その時点では、宅配業界にこれほどの影響を及ぼすとは思ってもいませんでした。ただ、グローバル経済の中では、規模を大きくしていくものだけが成功を続けられるという「収穫逓増の法則」を諦めた時点で、その企業は負けてしまう。その業界のシェアを独占するくらいでないとやっていけない。しかも、それに従って労働環境は悪化していく。

 1980年代の宅配業界における「動物戦争」もシェア争いではあったものの、全体の市場が増加していったからなんとかなりましたが、いまは取扱個数が増加しても、それに見合った市場にはなっていない。

横田:佐川急便は、そのシェア争いから一歩引きましたが、いまはヤマトと日本郵政が争っている。それを支える労働者にはアジア系を中心とした外国人も多い。現時点では母国より日本での賃金のほうが高いから彼らも働いていますが、アジア諸国が経済発展していく中で、日本で働いてもさほど稼げないとなったら、その仕事を誰がするのか……。

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