ビジネス

【宅配業界の深層対談3】価格競争の限界と業界の行く末

『小倉昌男 祈りと経営』を上梓した森健氏


森:そう言えば、小倉さんは生前、北海道の新千歳空港をアメリカからの荷物の拠点にしようと考えていた、という話を聞いたことがあります。北海道に足繁く通っていた1980年代後半にそういうアイデアをもっていたようです。羽田や成田なんかよりアメリカに近い新千歳空港をゲートウェイにすれば、航空運賃の燃料費が抑えられると考えた。実際に取締役会で検討されたかはわかりませんが、そのような小倉さんであれば、現在のような宅配便業界のシェア争いの中でも、もっと攻めの経営をしているのではないかと思いました。

横田:たしかに、シェア争いには参加するとは思いますが、その一方で、過当競争にならないよう単価を維持していたのではないか、という気もします。いまのヤマトは、取扱個数を増やすことで生き残ろうとしていますが、それが良いことなのかは僕には疑問です。運賃を上げようという話にならないのが不思議でしょうがない。

森:たしかに、もし小倉さんなら、単に自社のことだけでなく、業界全体のことを見た経営をされているかもしれないですね。

【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年、福岡県生まれ。ジャーナリスト。物流業界紙『輸送経済』の記者、編集者を務めた後、1999年よりフリーランスに。著書に『仁義なき宅配』『ユニクロ帝国の光と影』などがある。

森健(もり・けん)/1968年、東京都生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学在学中からライター活動を始め、1996年よりフリーランスに。著書に『小倉昌男 祈りと経営』『「つなみ」の子どもたち』などがある。

(了)

■取材・構成/ツカダマスヒロ

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