前出のCLB・韓代表によると、昨年12月1日から今年2月8日までの間で、1050件の労働争議が起きているが、「そのうち90%が賃金の未払いが原因」であることを明らかにした。
業界別に見ると、最も多いのが建設業界で、全体の55%を占めている。中国では不動産不況で「鬼城」と呼ばれる、人が住んでいないゴーストタウンの乱立が問題になっているが、このあおりを受けて、農民工(出稼ぎ労働者)への給料が支払われていないケースが最も多いという。「いつも真っ先に泣かされるのは底辺の労働者だ」と韓氏は語気を強める。
その次に続くのは全体の23%の製造業で、鉄鋼業界はこれにあたる。そして、3番目が同5.6%の石炭業界だ。
この鉄鋼業界と石炭業界で大幅なリストラが行われる予定で、尹部長は全人代開幕直前の2月末、記者会見で、石炭業界の130万人を含む計180万人の従業員の再就職や再配置を行うことを明らかにした。中国政府要人が公の場で、リストラの具体的な数を提示するのは初めてだ。
【プロフィール】そうままさる:1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館刊)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館刊)。
※SAPIO2016年5月号