「親族が後を継ぐことには、基本的に僕は反対。セブンの場合でなくてもね。でも、いくつもの店を持って、財産なども誰がどう継ぐかという問題はある。会社を親族が継ぐことには、まったく反対している」
一気にそう語ると、一呼吸置いてこう続けた。
「僕は『正しい成長』をずっと考えてきた。望んでいるのはそういうこと。それは自分で示さないといけないと考えている。スパッと(辞めると)自分で言ったけれど、オーナーからも『なんらかの形で携わってほしい』と言われているから、自分ではみんなに迷惑かけないようにしていかなくちゃいけないと思っているんですが」
鈴木氏は、現在の心境をこう語った。
「昨日は会社を休んで、(地元である)長野の坂城町立小学校の同窓会に行ったんだけど、そこでも『なんで?』と聞かれた。でも『そういう話はよそうよ』と言って昔の話をみんなでしたんです」
──しかし退任表明会見では、十分に誤解を解こうとしたようには思えなかった。
「なんでこんなみっともないことで争っているのかというように見えると思う。家内にも相談せずに一人で決めて、電話で『今日、引くよ』と伝えたんです。任期は5月までだからそれまではやりますが」
──反論はしない?
「そういう不誠実なことをすれば誤解をどんどん生むことになる。セブン&アイの社長(村田紀敏氏)にも聞いてもらえばわかるが、息子を社長にしたいだとか、そんなことは絶対にない」
記者の目を据えて再度断言し、鈴木氏は自宅に入っていった。鈴木氏の発言からは、表現に気を使いつつも、奥にある複雑な感情が垣間見える。
一方で、複雑な感情は社内にもくすぶる。
「“鈴木商店”と呼ばれてきただけあって、社内に鈴木氏の復帰を求める声は少なくない。会長派は鈴木氏を強く支持するフランチャイズオーナーを中心に巻き返しを図ってくるだろう。だが、会長の退任表明後、株価は上がった。市場が世代交代を評価したことは、会長派にとってショックだったのではないか」(経済ジャーナリスト)
撮影■横溝敦
※週刊ポスト2016年4月29日号