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地方財閥の雄 名古屋の岡谷、福岡の麻生、島根の田部

地方財閥として知られる岡谷鋼機(同社HPより)

 全国的、さらには国際的に事業を展開する三大財閥とは対照的に、創業した土地に根差した商売で財を成し、その地域社会に影響力を持つのが「地方財閥」だ。代表的な存在を紹介する。

■名古屋では「嫁に出すならトヨタより岡谷の社員」

 中京エリアの大企業といえば誰もが「世界のトヨタ」を思い浮かべるだろうが、名古屋財界で「トヨタより格上」と評されるのが、年商7854億円を誇る鉄鋼、機械の専門商社・岡谷鋼機を中核とする岡谷家だ。

 創業は1669年。初代・岡谷惣助が金物商を起業して以来、350年にわたって金物(鋼材)を扱う老舗である。

「岡谷の凄さは名古屋での圧倒的な信用力。これまで数々の地元企業を育て、取引先が苦境に陥っても決して見捨てない。だから岡谷が絡んだプロジェクトなら銀行も信用して金を出す」(地元財界関係者)

 現社長の岡谷篤一氏は13代目。中部電力や名古屋鉄道、中部日本放送など錚々たる地元企業の社外取締役や社外監査役に名を連ねていることからも岡谷の「ブランド力」がわかる。

 岡谷鋼機OBは、「地元では、『嫁に出すならトヨタより岡谷の社員』といわれます」と胸を張る。

■筑豊の麻生、山陰の田部

「麻生に逆らったら筑豊では生きていけない」

 そういわれるのが福岡県飯塚市に本拠を置く「麻生財閥」だ。麻生太郎・副総理の実家である。

「炭鉱王」と呼ばれた麻生家はその後セメント業(麻生セメント)に進出、現在はベッド数1116床という全国有数の巨大病院「麻生飯塚病院」を中心に、医療、介護、IT、各種専門学校まで多角的に経営している。現在、麻生グループの代表を務めるのは副総理の実弟、麻生泰氏だ。

 地元・飯塚の中小企業経営者が語る。

「麻生は“ゆりかごから墓場まで”住民の生活に直結した事業をしているが、飯塚ではそれが当然です。麻生家が市政に口を出すようなことはないが、困った時は市長ではなく麻生さんに言えば助けてくれるというのが住民の共通認識」

「山陰の山林王」として知られるのが島根県雲南市の田部(たなべ)家だ。室町時代に「たたら製鉄」という砂鉄を使った製鉄業に乗り出す際に、燃料を確保するために広大な山林を所有。最盛期には2万5000町歩(東京ドームの5000倍以上)の山林を持っていた。

 当主は代々、「長右衛門」を襲名し、現当主は25代目。木材業の株式会社田部を中心に、外食チェーンなど多角的に経営し、地元で絶対的な発言力を持つ。田部家は現当主の祖父にあたる23代長右衛門が島根県知事を務めたが、その後は政治家を輩出していない。

「23代目は竹下登氏を支援し、総理大臣にした。以来、田部家は政治家は自らなるものではなく、育てて地元のために使うものだとタニマチに徹している」(田部グループ企業社員)

※週刊ポスト2016年5月6・13日号

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