ブリュッセルの事件を引き起こした中心人物と見られているのが、空港で自爆したイブライムと地下鉄で自爆したハリドの兄弟である。この2人が育ったのはイスラム教徒が多いことで知られるブリュッセルのラーケン地区だ。兄弟の父親も、モロッコから来た移民だった。
「人権救済」という美辞麗句を掲げて移民や難民を大量に安易に受け入れたことが、悲劇をもたらしている。それは、今後さらに深刻化する。
ベルギーだけではない。ギリシャやイタリアも、テロリストの足場となっている。ブリュッセルの同時テロの容疑者のうち、少なくとも3人はギリシャを経由してベルギーに渡ったことが判明している。彼らは偽造シリア旅券を使ってアテネ入りし、同じアパートに住んでいた。
パリ同時テロの首謀者で、フランスの特殊部隊に射殺されたアブデルハミド・アバウドが一時アテネで暮らしていたアパートでは、ブリュッセルの空港の見取り図などのデータが発見された。前述の兄弟の弟・ハリドも昨年一時、イタリア経由でアテネに渡っていたことが判明しており、アバウドと接点を持っていたとされる。
さらにイタリアでは、複数のテロリストの身分証明書を偽造していた人物が摘発されている。つまり、ブリュッセルとパリの事件は密接につながっており、その背後にはイタリア、ギリシャ、ベルギーなどに張り巡らされた「テロ支援ネットワーク」が存在しているのだ。EU諸国はテロリストにとって武器も調達できて仲間もいる、居心地のいい場所と化した。
※SAPIO2016年6月号