完治するまでに10年以上かかる患者もいる中、劇的な治療法はないのだろうか。前出のA氏、B氏は、睡眠導入剤や精神安定剤、抗うつ薬などの投薬治療で様子を見ているという。B氏に至っては藁をもすがる思いで漢方専門医の門を叩いたが、「朝鮮人参配合のドリンクを飲まされ、夜眠れずに余計に不安感が増した」と苦笑する。
「投薬治療は、うつ病患者に使うような伝達物質セロトニンを増やす薬を処方するのが一般的です。パニックにならぬよう、安定剤を予防的に飲み続けている人もいますが、依存性が強いので、あまり望ましくありませんし、根本的な解決にはつながりません」(前出・和田氏)
和田氏は投薬治療と並行してカウンセリング療法の重要性を説く。しかし、そこには大きな誤解もあるという。
「パニック障害になるような人は“心が弱いから”と偏見を持っている人が多いのです。精神科の中にもそういう考えを持ち、カウンセリング療法を否定している医師もいるほどです。
実際には心が弱いのではなく、真面目で視野が少し狭いだけ。だから病気を治さない限り生きていけないと焦ってしまうのです。そういった患者さんには症状が出ても深刻にならずに受け入れ、気楽に生きていけるように促す『認知行動療法』と呼ばれるカウンセリングをしたほうが改善するケースが多い。
人間の心には個人差がありますし、ストレスに弱い人は体質も影響しているでしょう。そうした個々人の心に対する周囲の理解がもっと進まなければ、パニック障害に苦しむ人は減っていかないでしょう」(和田氏)
ストレス過多な現代社会。誰もが“心の破綻”をきたすリスクを抱えていることを認識したうえで、企業は患者をサポートする体制を整えていくべきだろう。