避難訓練や救急訓練ならやる意味もあろう。しかし、投票に訓練なんて必要か。用紙に名前を書いて投票箱に入れるだけではないか。衆参同日選挙の場合でも、投票用紙の色は違うし、投票箱も違う。しかも、説明板も置いてあるし係員も配置されている。それでなお模擬投票をするのは、投票ゴッコという遊びでしかない。
投票ゴッコでもよい。慣れや動機づけにはなる、という人もいる。困ったものだ。
現在、高校で医大志望者がふえている。そのための小中学生向けの塾もある。そこでお医者さんゴッコが奨励されるだろうか。医大入試の面接で動機を聞かれ、子供の頃からお医者さんゴッコが好きでしたと答えたら合格するだろうか。そんな奴は真先にはねられる。
政治教育ゴッコも投票ゴッコも政治理解には何の役にも立たない。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。
※週刊ポスト2016年6月3日号