お釈迦様は、欲愛・有愛・無有愛の三つの渇愛から苦が生ずると説かれました。欲愛は生殖の渇愛、有愛は生存の渇愛、無有愛は死の渇愛です。生殖の渇愛である「欲愛」によって人は生まれます。そして生存の渇愛である「有愛」によって人は生きて、死の渇愛である「無有愛」によって死にます。生殖・生存・死の繰り返しが「輪廻」という苦です。そして、これら生殖・生存・死の三つは、現代科学における生物の三要素なのです。

 人間の設計図である遺伝子に、生殖・生存・死の渇愛が書かれているのでしょう。そして、生まれては死ぬ繰り返しの間、存続し続けるのは遺伝子です。遺伝子の支配によって、輪廻という苦が生じているのです。お釈迦様が、もしも古代ギリシャでソクラテス達のシンポジウムに参加していたら、「エロスは苦しみの原因である」と話したことでしょう。

●たなか・まさひろ/1946年、栃木県益子町の西明寺に生まれる。東京慈恵医科大学卒業後、国立がんセンターで研究所室長・病院内科医として勤務。 1990年に西明寺境内に入院・緩和ケアも行なう普門院診療所を建設、内科医、僧侶として患者と向き合う。2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月と自覚している。

※週刊ポスト2016年6月3日号

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