「私が診た患者さんのなかには体調の回復によって、がん治療を再開できた人もいます。寿命を延ばすことに寄与した栄養管理を『治療ではない』といえるでしょうか」
東口氏はこう訴える。
「ある意味、がんで死ぬのは寿命です。それを全うできず、途中でがん以外の原因で亡くなることがあってはなりません。適切な栄養管理を行なえば、長生きする人は沢山います。だから私の望みは、がん患者さんが『がんそのもの』で亡くなることなのです。栄養状態が良ければ、たとえ末期のがん患者さんでも最後の最後まで生き生きと過ごせるものです」
がんの代謝栄養学を研究する、緩和ケアの第一人者が提起したこの問題は、「がん治療先進国」といわれる日本において、「医療とは何か」を問いかけている。
※週刊ポスト2016年6月10日号