■サバイバルの条件2 空腹をしのぐ水
四方を壁で守られた小屋に入ったら、やっと少しは安心する。そうすると、がぜん腹が減ってることに気づく。身の周りに向けてひたすら張り詰めていた気持ちがフッと途切れて、初めて空腹を意識するんだ。で、明るくなったのを見計らって、飲める水を手に入れられる場所を探すんだよ。
オレもそうだったけど…水は空腹を埋めてくれるというか、腹の足しになる。もっとも、水をガブガブ飲んだところで、腹はすぐに減ってくるんだけどな(笑い)。
でも、オレも水だけで1週間は大丈夫だった。そのくらいまでは何とか保つんだよ。あの少年は7日目の発見だったから、水だけで生き延びられるギリギリのところだったかもしれないな。ともあれ、腹に何か入れるのが、サバイバルの第2関門だ。
オレの場合、その後、山菜やキノコを採ったり、昆虫なんかを捕まえて食ってた。カブトムシやクワガタムシの幼虫、ハチの子、カタツムリ、カエル、ネズミ、コウモリ…。カブトムシの幼虫がいちばんウマかったな。
■サバイバルの条件3 感情的にならないこと
自衛隊の小屋が見つかって、そこに水があって、偶然の幸運が重なったかもしれないけど、 あの子がすごかったのは、泣き叫ばなかったことだとオレは思うよ。身を寄せる場所を確保して、腹に何か入れる。そうすると今度は、独りでいることがつらくなってくるんだ。
ふつう、7才の子供なら、寂しくて、わけもなく泣き叫んだりしたろう。思わず、小屋の外に飛び出したかもしれない。でも、感情的になって突発的な行動を取ると、周りの動物がそれに気づく。今度こそ獣が襲ってくるかもしれない。
1つ1つ、身の周りのことが満たされていくと、人は気持ちに余裕が出てきて、感情的になるものかもしれない。でも、実際のところ、周りの環境がそう変わったわけじゃない。身の周りから危険がなくなったわけじゃないから、油断しちゃいけないんだ。そりゃあ、ずっと緊張ばかりしてはいられないけど、気持ちをゆるめすぎないこと、警戒を怠らないことが何よりだ。
オレは山ん中では、落ち着いて、無理にでも気持ちを落ち着けて、この先に起こりそうなことをできるだけたくさん予測した。雨、風、雷、暑さ、寒さといった自然。いつ、どこから現れるかもしれない獣。うっかり口にして体に害を与えるかもしれない山菜や植物の類…。結局は、自分の身は自分で守るしかないんだよ。
※女性セブン2016年6月23日号