では、麦茶人気はこの先も続いていくのか──。前出の宮下氏は過去の“お茶ブーム”の変遷を振り返りつつ、「少しずつ落ち着いていくのでは?」と予測する。
「1990年代は『爽健美茶』や『十六茶』(アサヒ飲料)などのブレンド茶が、〈体に良さそう〉〈苦味がなくて飲みやすい〉という理由から売れた時代でした。
それが2000年代に入ると、一転して〈日本人はやはり緑茶が一番〉〈苦味は旨み〉と再認識され、『生茶』(キリンビバレッジ)が大ヒット商品になりました。しかも、緑茶に含まれるカテキンには脂肪吸収を抑える働きもあり、体にも良さそうだと。そこでブレンド茶の存在価値がどんどん低下し、麦茶にまで人気を奪われていったのです。
麦茶は熱中症や生活習慣病予防、ノンカフェインで子供にも安心というイメージが広がったおかげで、今後も一定の人気は保っていくと思います。増量ペットボトルが登場しておトク感もありますしね。
ただ、ここにきて『爽健美茶』をリニューアルしたり、ご当地ブランドの『十六茶』を出したりするなど、各飲料メーカーがブレンド茶の復活を目指してテコ入れをしています。ブームが一周したところで、再び茶系飲料の人気カテゴリーが変わっていく可能性はあります」(宮下氏)
麦茶は様々な健康効果が期待できる一方で、他のお茶類と比べて抗菌作用が少ないため、一度キャップを開けてしまうと、たとえ冷蔵庫に入れておいても痛みやすいといった“難点”もある。
「夏の定番飲料」を巡る戦いが熾烈になってくれば、不動の麦茶ブランドを持つ伊藤園といえども油断はできないだろう。