一方、プーチン大統領は中国との係争地やノルウェーとの係争海域について面積を二等分することで国境問題を解決しているから、北方領土問題も日本がラブロフ外相の意見を取り入れた上で「面積等分方式」を受け入れる態度を見せることが、事態打開につながる可能性は非常に高い。
私は以前から、柔道愛好家として知られるプーチン大統領が日本に対して投げかけた「引き分け」という言葉の意図は、北方領土の面積等分による決着だと分析してきた。面積等分なら、国後島、色丹島、歯舞群島と択捉島の一部が日本に戻ってくる。その外交的な成果を掲げて年末か年明けあたりに解散・総選挙に打って出れば自民党が圧勝し、安倍首相は2020年秋以降まで続投できる。
逆に、それより後に総選挙を遅らせるとアベノミクスの失敗が日増しに顕在化し、日本がブラジル化して政権が五輪までもたない恐れがある。
いや、安倍首相の任期は、自民党総裁の任期が切れる2018年9月までだからそれはない、という人もいるかもしれないが、すでに自民党内では総裁任期を現在の「2期6年」から「3期9年」に延長すべきだという意見が出ている。もしそうなれば、安倍首相は2021年9月まで政権の座に居座ることも可能になる。
そして、そこまで猶予期間があれば、念願の「憲法改正」もじっくりと腰を据えて取り組むことができる。いきなり第9条改正は無理でも、実現しやすい条文から変えていけばよい。
「東京五輪」と「憲法改正」。安倍首相のすべての政治日程は、この二つの目標達成のために決められると考えてよいのではないか。
※週刊ポスト2016年7月1日号