さらに、長崎大学歯学部の久保至誠准教授は、歯を削ることに熱心な日本の歯学教育について証言する。
「昔の歯学教育には、“予防拡大”という概念がありました。これは先々虫歯になるだろうと予測される健康な部分の歯も、ついでに削って、銀歯などで詰めてしまう考え方です。
奥歯にできた比較的初期の虫歯は、型をとって填めるインレー(詰め物)を使います。この時、歯磨きでキレイに磨けるように虫歯部分よりも広く削ってインレーを填めるように教育されました」
つまり、熱心に虫歯治療に通えば通うほど歯を削られ、歯の寿命を縮めていたのだ。もちろん時代が今とは違うが、国として虫歯治療の方向性を転換する理由を説明するべきだろう。
そうしなければ、古い考え方の歯医者は今でも“予防拡大”をしている可能性はある。
●レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2016年7月8日号